siren

闇に浮かぶ紅い手が
艶めかしく蠢きながら拱(こまね)いている
細やか程度の虫の声
(棄てられた寝衣)素肌に毛布が突き刺さる

居ない
何処にも居やしない

黒い電球
薄明かり
棗を燃した残り香が髪に染み着いていた

総て放り込め
何もかも真っ白く
潰せば赤く血の様になる

帰省
回帰
濾過
熔解

また落ちた

粘着いた経血の様に汚れて仕舞え
洗浄不可能に堕落
塗り固めて塗り重ねて
剥がれ落ちた恐怖は底無し

空腹
枯渇
喉の渇きは虚構幻想


薄桃の痕傷が昔の様に痛み疼くのは

懐古




『もう、休ませておくれ』


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