幼馴染み
 また転生させられて、生まれたのは現代日本。両親と私の三人家族で特別裕福でも特別貧しいわけでもない、ごく普通の家庭。近所の人も皆良い人ばかりで治安も良く、中々に宜しい環境だと思う。
 斜向かいにマフィアが住んでいなければ、だ。
 私が三歳の時に父の都合で此処「並盛町」に越してきた。斜向かいの家の「沢田」という表札に戦慄したのを覚えている。母親同士が同い年で、それぞれの子供も年が同じとあっては仲良くならないわけがなく、私の幼なじみは必然的に「沢田綱吉」だった。
「オレ、大きくなったらマコトと結婚する!」
「……私の身長追い抜いたらね」
 という会話もいつの間にか行われなくなり、私と綱吉の関係は疎遠の一途をたどっている。まぁ、私がそうなるように少しずつ空気を変えていった所為もある。原因はアレだ、いつだったかは忘れたが、ボンゴレの九代目が沢田家に訪れた時だ。
 その日私は部屋の掃除をしていて、先日綱吉が無くしたと騒いでいたロボットの部品を見つけた。いつまでも無くしたと非難されるのも癪なので早々に返しに行ったのだが、沢田家の門から庭を覗いて目にしたのが、綱吉にじゃれつくチワワとチワワにじゃれつかれて泣く綱吉とそれによって覚醒した死ぬ気の炎に驚く九代目だった。
 あれは流石に自分のタイミングの悪さを呪ったね。
 反射的に顔を引っ込めて、庭から人がいなくなるのを待ち、いつも通りチャイムを押した。「ツっ君たら寝ちゃったのよー」と何も知らずに残念そうに言う奈々さんにロボットの部品を渡して、そそくさと家に帰ったのだ。
 それから特に何もなく、私は何度目かの中学生になった。

 オレには幼馴染みがいる。小さい頃は大人になったら当然その子と結婚するものだと思っていたし、背を追い抜いたらと軽くあしらわれても気にもしなかった。
 けれども現実は何処までも現実で、マコトとは小学校に入った頃から急速に疎遠になった。最初はマコトが学校の子達とばかり遊んでいる事を寂しく思い、次に段々腹が立ってきて、向こうがそうなのだからとこちらもそうしていたら、いつの間にか顔を見合わせても挨拶もしない間柄になっていた。
 元々背の高かったマコトはオレと違ってどんどん背が伸び、容姿もカワイイ系では「笹川京子」、キレイ系では「扇(おうぎ)マコト」と言われるほどの美少女になっていた。

「山本君って扇さんと付き合ってるらしいよ?」

 ある日のクラスメイトの話に、頭を鈍器で殴られたような衝撃が襲った。

「うっそマジで!? ――何かもうレベルが違いすぎて嫉妬心すら起きないよ……」
「美人だもんねぇ……扇さん。背が高くて痩せててスタイル良くて、モデル体型ってああいう人のこと言うんだろうねぇ。腰の高さの違いに全私が泣いた」
「身長170センチだって」
「……どうりで高いわけだ」
「お似合いだよね」
「放課後教室でキスしてたんだって」
「映画館に入ってくの見た人もいるってさ……」
「……もっと身近な恋を探すよ」

 いつの間にかオレとマコトの世界は違う方向へ向かっていて、きっと交わることは二度とないのだろう。
「どうせダメツナだし……」

 この時のオレは、この後再びオレとマコトの世界が交わるとは思ってもいなかった。


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