◎ 「手を繋ぐ…19」
「はい」
「はい。」
アカギが手を差し出すので、その上に自分の手のひらを重ねた
「普段並んで歩いている時も繋ぎませんから、変な感じですねえ」
「そうだな」
「相変わらず大きい」
「あんたのはすべすべしてる」
「別の生き物のようですね」
「女の手って皆こうなの」
「ええ」
小さく、弱い
手を重ねると互いが異性なのだと嫌でも認識させられる
この悪魔は、狐はそんなありふれた、低俗なものではないのに。
体だけは人間の形を取るしかない
自分のことはちっとも気にかけないが、相手が性別の型に収まらなければならないことは冒涜だと二人とも考えていた
アカギは時々そう感じざるを得ない場面に遭遇すると狐に失望し、悔しく思った
本当は狐を女と称することも乗り気ではない
その辺の女と見てくれ以外は違うのだから
賭博だけが、女を異形に引き上げてくれる
「この肌触りは嫌いじゃない。たまには手でも繋いで出歩いてみるか」
「嫌ですよ、親子にでも見られたらどうします」
「どっちかっていうと不倫に見えるんじゃない」
「余計世間様に顔向け出来ませんよ」
「なんであんたって本当は平気な癖に世間体なんか気にしてるふりするかね」
「ふふ」
アカギに手を引かれて家を出た
辺りは暗く、街灯と街灯の間の影で指先が絡められたことに誰も気がつかなかった
拍手小説アンケート企画第一段
確かに、この二人滅多に手を繋がない。
実際のところ、二人とも物理的に傍にいたい、触れたいという欲求が人より少ない上に、わざわざ外でべたべたせんでも良いだろうと考えていそうです
しかし、二人とも手は相手の好きな部分であります。
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