◎ 2017/7/7 七夕
「はい」
アカギが手渡して来たのは一本の笹だ
「今日は七夕だろ」
「ええ、どうしたんです、これは」
「歩いてたら貰った」
アカギが歳時を気にかけるとは、驚きだ
「家には笹は置かないんだな」
「ええ、丁度いいものが手に入らなくて。ありがとうございます」
大切そうに厨房から花瓶を持ってきて笹を刺した
「アカギさんに願いはあるのですか」
「無いな…」
勝負の熱は自分で満たしている
金にも困っていない
物は必要最低限で事足りる
他に欲しいもの。
「私も無いのですよ」
彼女にしては珍しく少し困り顔で笑ってみせた
自分で道は切り開いてきた無頼の性質か、頼み込むほどの願いが見つからない
「ああ、一つあった。俺じゃ叶えられない願い」
にやりとアカギがいたずらっぽく口を緩める
あまり良い予感はしていなかったが、興味には勝てない
「何ですか」
「早くあんたと勝負がしたい」
目をじっと見て誘うようにそう口にした
それはアカギにとって一番の睦言なのだが、言われた当人はきっと気がついていない
「それは、私への頼みじゃないですか…」
「早く叶えて」
結局、笹に札は下がらなかった
でもそれが「らしい」と思う
関係性は冬の人くらい
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