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 2017/7/7 七夕




「はい」


アカギが手渡して来たのは一本の笹だ


「今日は七夕だろ」

「ええ、どうしたんです、これは」

「歩いてたら貰った」


アカギが歳時を気にかけるとは、驚きだ


「家には笹は置かないんだな」

「ええ、丁度いいものが手に入らなくて。ありがとうございます」


大切そうに厨房から花瓶を持ってきて笹を刺した


「アカギさんに願いはあるのですか」

「無いな…」


勝負の熱は自分で満たしている
金にも困っていない
物は必要最低限で事足りる
他に欲しいもの。


「私も無いのですよ」


彼女にしては珍しく少し困り顔で笑ってみせた
自分で道は切り開いてきた無頼の性質か、頼み込むほどの願いが見つからない


「ああ、一つあった。俺じゃ叶えられない願い」


にやりとアカギがいたずらっぽく口を緩める
あまり良い予感はしていなかったが、興味には勝てない


「何ですか」

「早くあんたと勝負がしたい」


目をじっと見て誘うようにそう口にした
それはアカギにとって一番の睦言なのだが、言われた当人はきっと気がついていない


「それは、私への頼みじゃないですか…」

「早く叶えて」


結局、笹に札は下がらなかった
でもそれが「らしい」と思う







関係性は冬の人くらい






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