FREAK OUT | ナノ


――何故強さを求めるのか。


ボクシング界にその名を轟かす”拳王”砲河原丈吾(つつがわら・じょうご)の息子として生まれたサラブレッド、砲河原祥吾。恵まれた体格と抜群の運動能力、父をも震撼させる程の戦闘センスを以てアンダージュニア大会を総嘗めにしてきた彼は、インタビュアーの問いに、こう答えた。

それ以外に興味が無いからだ、と。


砲河原は物心付いた頃より、父からボクシングの英才教育を受けて育った。最早虐待の域とも言える苛烈なトレーニングに母は異議を唱え、父を糾弾したが、砲河原自身は父が求める以上にボクシングにのめり込んでいた。

鍛え上げた体から繰り出される洗練された拳打。それが、あらゆるものを破砕することに、彼は命を懸ける価値があると感じていた。

肉体。研鑚。技術。誇り。尊厳。自信。精神。
ただの拳の一撃で、それらが砕ける。砲河原はただ、その瞬間を求めていた。


十三歳にして父を打ち負かし、彼を死に追いやって尚、砲河原は拳を打ち続け――翌年、彼の拳は能力覚醒を経て、人智を超えた。

ロードワーク中に遭遇したフリークスを拳打で粉微塵に粉砕した日から、砲河原はFREAK OUTの能力者として生きる道を辿ることになった。


ボクサーの道が途絶えたことに、不満は無かった。寧ろ、より高次元の世界で思う存分拳を振るえることに感謝すらしていた。



――何故強さを求めるのか。


RISEを半年たらずで卒業し、一年間ドリフトとして活動した後、本部勤務を経て精鋭部隊ジーニアスに抜擢された彼は、FREAK OUT広報部の質問にも、こう答えた。

それ以外に興味が無いからだ、と。


その言葉の通り、彼は戦い以外に関心を抱かなかった。自分の命も他人の命も等しく視野に入れず、破壊と殺戮の限りを尽くす砲河原を人々は生まれながらの戦闘狂、人の体で生まれ落ちた破壊の化身として恐れた。

時に友が、恋人が巻き添えで殺されたと糾弾されようと、彼の拳は迷い無く、躊躇無く、眼の前の悉くを破砕した。


「祥吾はさぁ、能力が強過ぎてコントロールする必要が無いんだよなぁ」

next

back









×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -