FREAK OUT | ナノ


アクゼリュス来襲まで、あと五日。

日和子の予知からちょうど折り返しとなったこの日、ジーニアス第二分隊は予定通り、吾丹場に派遣されたドリフトの支援任務へ向う。


「おはようございます、師匠」


着任日と同じように、隊舎の部屋に迎えに来た雪待をドアの前で待ち構えていた愛が敬礼する。
また十分前に来るだろうと踏んで、十五分前に仕度を終えていた甲斐があった。予想的中だと口角を上げる愛に、雪待は短く溜め息を吐く。


「二日間、随分可愛がられたようだな。気持ち窶れて見えるぞ」

「痩せたって言ってください。その言い方だと、なんか不健康じゃないですか」


大袈裟にむくれて見せながら、愛は荷物が入ったボストンバッグで雪待の大腿部を軽く撲る。
「それが師に対する態度か」と言えば「あれが女の子に対する物言いですか」と言われたので、雪待は愛のバッグを取り上げるようにして担ぎ、そのまま廊下を歩いて行く。

ピンク色のボストンバッグを持つことに抵抗はあるが、先の非礼への埋め合わせにはちょうど良いだろう。愛は其処までしなくていいと言うような顔をしているが、雪待は構わず足を進める。


「それで、成果は?」

「……未だ完璧な仕上がりとは言えません。なので、吾丹場についてからも訓練を付けていただくことになりました」


だろうな、と雪待が頷く。

たかが二日で完全に仕上げられるような訓練であったなら、精鋭部隊も形無しだ。そんな手緩い調練であったなら、今すぐ殴り込みに言っているところだったと雪待が呟くと、愛の顔が僅かに綻んだ。案の定、周りの動きに付いていけないことを気に病んでいたらしい。それを当たり前のことにしないことが大事だが、引き摺り過ぎても本末転倒だ。

此処で気持ちを切り替え、移動中にでも次の課題を考えさせようと思惟しながら、雪待は足取りを弾ませる愛と共に歩いていく。


「もし時間があったら、師匠もお付き合い願いますか?」

「考えておこう」


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