僕は宇宙人系男子 | ナノ


宇宙人に出会ったことはありますか。

そう問えば、凡その地球人は「会ったことない」と答えるでしょうし、「宇宙人なんていない」とも答えられるでしょう。

しかし、実は貴方達が気付いていないだけで、凡その地球人は宇宙人と会って、普通に喋ったりしているのです。


例えばそこで、二人の女性の間に挟まれ、修羅場に立たされている常連様。

貴方の右に立つ女性も左に立つ女性も宇宙人で、それを眺めているコンビニ店員の僕もまた、宇宙人です。


「星守くーん、レジお願いー」

「はい」


僕の名前は、星守真生。勿論これは地球で使っている偽名で、本名はマオ・チェスカドーラ・マグニ=ドル。

出身は惑星マグノタリカで、訳あって地球に短期留学……というか、短期潜伏しています。
繰り返し言いますが、僕は、宇宙人です。






地球人・星守真生として生き、正体を悟られぬようにと潜伏しながら彼是半年。
任務を全うすべく、地球人との接触を最低限に保ち続けてきましたが、先日の一件で、僕は痛感しました。

自分が宇宙人であることを隠すことばかりに気を取られ、地球人と一定の距離を置いていては、真に地球人のことを知ることは出来ません。
より地球人らしく振る舞う為にも、地球人の思考を知る為にも、僕はもっと地球人と親密になり、彼等のことを理解する必要があります。

月峯さんの時のような悲劇を繰り返さないよう、これから僕は身近な地球人と関係を深める努力をしていかなくてはなりません。

そう結論付けた僕は、まずはこのコンビニエンスストアに来てから最も付き合いの長い、彼との距離を縮めていくことにしました。


「修学旅行で沖縄に行った時に見た、ハブとマングースの戦いを彷彿とさせる光景だったな」


実際には、触手の塊VS巨大ハダカデバネズミというような光景でしたが、両者の熾烈な争いの形容としては適切と言えるでしょう。

店内の空気が凍てつく中、繰り広げられた女の戦い。
いつ彼女達が擬態を止めて、本気の殴り合いを始めるのかとヒヤヒヤしていながら見ていましたが、幾ら頭に血が昇っていても、法の抑止力は働いていたようです。

彼女達はあくまで地球人として舌戦を繰り広げ、その果てに「二股していた彼が悪い」という結論に至り、二人の凄まじい剣幕にすっかり小さくなってしまった彼氏さんを連れて、お店を出ていかれました。

彼がどうなるかは分かりませんが、まぁ、恐らく地球人的なやり方でどうにかされると思うので、大丈夫でしょう。
彼女達も僕の存在には気付いていたようですし、下手な真似はしないと信じ「ありがとうございます」と三人を送り出した、その直後。彼――火之迫さんの放った言葉が、嵐の過ぎ去ったような静けさで満たされた店内に一石を投じると共に、固まっていた日比野さんが動き出しました。


「流石、火之迫先輩っす! あの戦いをそんな的確に喩えるとは……自分、ハブ対マングース見たことないっすけど、ほーふつ出来たっす!」

「お前、彷彿って言葉分かってるよな?」

「うぉお! そこまでツッコまれるなんて、火之迫先輩、恐るべしっす! やっぱ火之迫先輩は、ツッコミ系男子っす!」

「何回も言うけど、俺の字名だけあまりにストレート過ぎないか」

「火之迫先輩のツッコミの切れ味は、真っ直ぐド真ん中剛速球ストレートの如くっすから!」

「生き様が変化球のお前にそう言われると、謎の自信が出るわ」

「あざーっす!」

「そこまで褒めてねぇ」


火之迫正貴(ひのさこ・まさたか)。
現在、大学三年生。このお店に来たのは高校一年生の頃で、アルバイトの中では最も長く此処で働いていらっしゃいます。
我々アルバイトからも、店長からも信頼は篤く、手厳しくも面倒見が良い方です。

そして、日比野さんから授与されたツッコミ系男子の名に相応しい、卓越したツッコミスキルを持ち合わせ、日比野さんの発言にもこのように、鋭く素早く応対されています。


半年の付き合いですが、僕が知っている火之迫さんの情報といえばこんな基礎的なもの。あとは、就職活動を始められたということくらいしか、彼のことを知りません。

何せ、このツッコミ力です。綻びを見せてしまえば、そこをツッコまれ、正体を暴かれてしまうのでは、という危惧から、僕は火之迫さんを警戒し、彼と深く関わることを避けていました。

しかし逆に考えれば、彼にツッコまれることが無ければ、僕は立派に地球人として振る舞えている、ということになります。
そういう点から見ても、僕は火之迫さんのことをもっと知り、彼と親密になる必要があると結論付けた訳ですが――。


「っと、お前と漫才してる場合じゃなかった。悪い、星守。明日の面接の準備あっから、俺帰るわ。あと頼んだ」

「はい。お疲れ様でした、火之迫さん」

「お疲れ様っす! 火之迫先輩!」

「おう、お疲れ。あんま星守困らせんじゃねぇぞ、日比野」

「了解っす!」


先述した通り、火之迫さんは現在就職活動中で、企業説明会や面接の為にシフトを徐々に減らされています。

彼と働く日が少なくなったことで、話す機会も減少した、というのは非常に痛手です。
ただでさえ、半年という時間が経過しているが為に、何をするにも”今更”という壁に当たってしまうというのに。

しかも、火之迫さんは内定が決まればすぐに此処を辞めてしまわれる、という話です。


タイムリミットは、刻一刻と迫っています。明日には内定をもらってくるかもしれない火之迫さんと、どうにかして仲良くならなければ。

と焦っても、下手を踏んでしまいそうで、にっちもさっちもいかない僕は、思い切って日比野さんに相談してみることにしました。


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