僕は宇宙人系男子 | ナノ


宇宙人に出会ったことはありますか。

そう問えば、凡その地球人は「会ったことない」と答えるでしょうし、「宇宙人なんていない」とも答えられるでしょう。

しかし、実は貴方達が気付いていないだけで、凡その地球人は宇宙人と会って、普通に喋ったりしているのです。


例えばそこで、先日とは別のお連れ様とご一緒に、仲睦まじくアイスを選んでいるカップルの彼氏さん。

貴方の隣で、バニラかチョコかで迷っている彼女さんは宇宙人で、それを眺めているコンビニ店員の僕もまた、宇宙人です。


「星守くーん、レジお願いー」

「はい」


僕の名前は、星守真生。勿論これは地球で使っている偽名で、本名はマオ・チェスカドーラ・マグニ=ドル。

出身は惑星マグノタリカで、訳あって地球に短期留学……というか、短期潜伏しています。
繰り返し言いますが、僕は、宇宙人です。





「……地球に短期潜伏、ですか」

「そうだ」


大宇宙治安維持局・対星間犯罪特務課。

それは、広大な宇宙の法と秩序を守り、悪を取り締まる、正義と平和の要にして、僕の本当の職場です。


「士官学校を主席した者は、まず地球の防衛任務に就いてもらう習わしでな。という訳で、君にはこれより、地球時間で約三年、潜伏任務にあたってもらう」


この方は、ユーリャ・ドレイグ・ルドゥ=タニア課長。
対星間犯罪特務課を取り仕切る、ルドゥーパ星人の女性エージェントで、僕の上司です。


「業務は主に三つ。一つ、地球人として潜伏し、地球のことを学ぶこと。二つ、地球保護法違反者の取り締まり。そして三つ、報告レポートの提出。以上だ」


士官学校の卒業後間もなく、対星間犯罪特務課に配属された僕は、ユーリャ課長に呼び出しを受け、エージェントとしての初任務を言い渡されました。

それが、地球時間で約三年間の潜伏任務――。僕にとってそれは、予想外の指令でした。


対星間犯罪特務課は、大宇宙に存在するあらゆる悪を取り締まる組織です。

エージェント達は宇宙の隅から隅まで、銀河パトロール、宇宙海賊の摘発、貴重小惑星の保護活動、惑星国家への潜入調査、星間戦争の渦中にまで派遣されます。
業務も派遣先も、実に多岐に渡る為、僕は初任務が、地球潜伏になるとは、夢にも思わなかったのです。


異星人の存在を確認出来ていない、ほぼ唯一の惑星・地球。
その特異な環境と、地球人という原生種に魅せられ、この星には、遥か銀河から多くの宇宙人達が訪れています。

ある者は、地球人との交流の為。ある者は、地球独自の文化を学ぶ為。またある者は、地球の食事やファッションの研究の為……。
様々な目的を持った、様々な宇宙人達がいますが、中には、地球人気に肖って、悪事を働くべく来訪する輩もまた、多く存在しています。

ですので、対星間犯罪特務課のみならず、大宇宙治安維持局の各組織は、地球保護に力を入れて取り組んでいる……ということは、士官学校で習っていたので知っていましたが。
地球という星を、積極的且つ意欲的に調べる程の関心を、当時持ち合わせていなかった為か。
僕は、自分が地球に向うことになるということを想像だにしていませんでしたし、指令を受けても尚、あまり実感が湧かずにいました。


多くの宇宙人が魅了されてやまない星、地球。

其処は本当に、宇宙人誰もが絶賛するに値するような、素晴らしい場所なのか。そんな場所で僕は、どんな風に過ごしていくのか。きちんと初任務をやり遂げることが出来るだろうか。

期待よりも、漠然とした不安が大きく戸惑っていた僕でしたが、ユーリャ課長はそんな僕を鼓舞するように、力強い声で、こう言ってくださったのでした。


「マオ・チェスカドーラ・マグニ=ドル。君のエージェントとしての初仕事……我々の期待に沿えるよう、全力で取り組み、見事達成してみせてくれ」


自ずと丸まっていた背を、叩かれたような気分でした。

僕は、ユーリャ課長の激励を受け、改めてエージェントとしての責務を果たさねばと、胸を張って敬礼しました。


「……はっ!」

「うむ、よろしい」


使命感に燃えた僕の返答に満足げな笑みを浮かべ、うんと頷いたユーリャ課長。

彼女の期待に応える為にも、この任務、必ずや完遂しなければと、僕は鉢巻を締めて掛かる思いで、地球潜伏任務に取り掛かろうと決意したのでした。


「……と、ついでにこれは、私から個人的な依頼なのだが」


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