▽■



「あーはいはい分かってるって。着るから。じゃあ切る―――って」


無意識にダジャレで通話を終えてしまった。相手は母さんだからまあ、いいだろう



「着ると切る、ですか」


「………笑えた?」


「寒いです」


「ああそう」


「それ、着るんですか?」


とんっと俺の背中にもたれて肩越しから俺の手にあるスーツを見る。母さんによれば父さんが用意してくれたらしいが、聞こえてきた値段は聞かなかったことにした。リクルートスーツで良かったとは言えない。


そう、明日は成人式だ。


「着ろだってさ」


「高そうですね」


「………テツヤは?」


「普通のですけど」


「ふーん、色んな意味で楽しみ」


「………やめてください」


「何想像したの」


微笑んで、ぐいっと体重を後ろにかける。バランスを崩しそうになったのか彼の手に力が入った。


「名前くんが、」


「うん」


「お酒を飲みすぎることを想像しました」


「………」


てっきり少女漫画みたいな反応をしてくれるかと思ったら綺麗にかわされた。流石テツヤだ。雰囲気があれば違う反応が見れたかもしれない。


「ちょっとでも脱いだら連れて帰ります」


「厳しいな…上着は?」


「それは……でも」


ネクタイは駄目ですと念を押された。飲む前に連れてかれそうだなあ。


気をつけないと。




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