▽10日



「名前くん、あっち空いてます」


「ほんとだ」


今日もバイトがあって、今はその帰りに寄っていくことになったマジバにいる。頼んだものの説明はもう要らないだろう。お察しの通りだ。


「テツヤ、」


「黒子です、名前くん」


「……、そっちは名前って言ってるけど」


「ボクはいいんです、開き直りました。名前くんも呼んで欲しかったみたいですし」


ズズ―とバニラシェイクを飲みながら、彼の視線が俺から窓の外へと移動する。ちょっと待った。


「開き直った…って。じゃあ俺にも呼ばせてくれても」


「黒子です」


ストローから口を離して、にこりとほんの少し口角を上げた。


嫌 が ら せ か


「なかなかムカつく」


「そうですか」


「テツヤ」


「黒子です」


駄目だ。長年このやりとりをしてきただけあって折れる気配がひとつもない。かと言ってこの言い付けを守ってきた記憶もあんまりない。もういい、ポテト食べよう。


そのとき、テツヤの携帯から音が鳴った。これはメールだな。


「―――赤司くんから」


名前くんにも、とどうやら俺にも何かあるらしい。


「なんて?」


「えっと、、11日までに各自好きな食べ物を用意しろ、名前は普通に鍋を作れ…だそうです」


「俺だけおかしいだろ」


しかも11日は明日だ。
どう考えても今思いついて今送ってきた内容。その前に俺は誠凛で帰宅部で。


ああ、嫌な予感がする。




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