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「黒子、俺にパス回したら怒るから」


「………なるべく気をつけます」


回す気だなこの子。名前は忘れたけれど強烈なパスだけはやめて頂きたい。加速するんですと説明された記憶があるがパスに加速なんていらない。今日だけはいらない。


「しかも」


俺らのチームは俺、テツヤ、火神で相手が日向さん、木吉さん、伊月さんだ。

3on3って……どうなんだろうか。俺が出る必要がさらになくなった気がする。人数も余裕で余りまくりだ。


「あ、そうそう。負けた方は焼肉奢りだから。全員分」


うふ、と突然財布に優しさのカケラもない一言がリコさんから発せられる。


前言撤回。
俺が必要だったわけだ。
払わせる気だ。


「やっぱパス回してくれていいよ」


「はい」


「なっっカントク!!だったらなんでコイツ入れ……」


「火神、コイツって?」


「はいはい文句言わない。始めるわよー」


ピーッと試合開始の笛が鳴る。慌て反応した火神がボールを取りに行ったけれど一足遅く、木吉さんがボールを取った。


「悪いなー。俺は勝たしてやりたいんだが財布がな、薄くて、はは」


「まぁ…そういうこった。俺も財布が―ってもうちょっと気合い入ること言えアホ!!―――?!」


パシッと可愛らしい音のあと、日向さんに回った筈のボールは俺の手に。

回せとは言ったけど…


「いきなり過ぎ」


「おい!苗字!!よこせ!!」


「うるさい火神」


「はあ?!!」


言われなくともよこしてやりますよっとドリブルをした所で伊月さんが来た。先輩のこの顔は、もしかしなくても


「苗字、またいつか会えると思ってたけど」


「ああはい、5日に会えました、ね!!」

よっこいしょ、とゴール近くにいる火神ではなく、いい位置に移動してくれていたテツヤに回した。俺の期待通り彼は上手くそれを火神にパスしてくれる。木吉さんが近くにいたけれど、ダジャレのおかげで助かった。


「うおっしゃあ!!」


ガコンッとダンクで決めた火神はというと、いつもに増して燃えていた。暑苦しいなあ。




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