▽4日 カランカランとアンティークな扉をくぐる。いつ来ても無駄に洒落た本屋だ。店主に難ありだけれど。 「いらっしゃ……あらあら名前君どの面下げて」 「叔母さん、単刀直入に言いますね。バイトさせてください」 ニコッと隣りにいるテツヤの肩に肘を置いて、あらかじめ用意しておいた言葉を投げ掛ける。 そう、ここは叔母さんが経営している本屋で、本好きには密かに噂になっているらしいなんちゃって本屋だ。 「は?バイト?生憎人手には困ってないんだけどねえ?」 「まあまあそう言わずに。テツヤも一緒にお願いします」 「テツヤ?……って……!ビックリさせないでよ。まったく。今もこれからもバイトなんて要らないわー」 「へえ、要らないんですか??」 ぎゅっとテツヤを抱き寄せる。こうなったらとことん翻弄させるのみ。 「あ、あの…苗字く…」 「いいから名前って呼んどけ」 小声でそう促してさらに体を密着させる。叔母さんの目の色が変わった。俺の勝ちかな 「ゴホンッ………名前君、テツヤ君、時給はいくらがいい?」 「あれ、要らないんですよね」 「黙ってなさい。いくらがいいの」 「うーん、1000円で」 「せっ…?!」 「あはは、冗談です。叔母さんが決めてください」 「……そう」 「じゃあまた連絡ください。待ってまーす」 テツヤを抱き寄せたまま、再びアンティークな扉をくぐる。案外さくさくと事が進んだ。これでバイトは決まったなあ 「名前くん、」 「うん?」 「あ、あんなに、くっついたら…絶対バレました」 「大丈夫、叔母さんはモノ好きだから」 「……?」 時給1000円にしてくれないかなー ← / → |