▽28日 「テツヤ」 「ん……」 ゆさゆさ揺さぶられて意識が夢から覚めていく。ぱちりと瞼を上げればエプロンをした名前くんが目に入った。 「おはよう、飯の時間」 「あ…はい、おはようございま、すっ――」 ズキン―と腰に鈍い痛みが走った。思ったより痛い。 「あーあ。立てる?」 その痛みの元凶、名前くんはムカつくほどの笑顔で腰に手を貸してくれた。ときめいたことは秘密だ。 「誰のせいですか…」 「ん?テツヤがそれくらい振ったんだろ」 「な…っ」 にを言ってるんだこの人は。数秒前のときめきを返せ。 だいいち、 「あれは名前くんが…!」 「うん」 「振れって、言ったからじゃ…ないですか…っ」 心の声が出ていると気づいたときには遅く、恥ずかしさで語尾が小さくなってしまった。やっと立ち上がることが出来たのに、名前くんの顔が見れなくてバランスを崩したフリをする。必然的に彼に受けとめられた。 「テツヤ、」 「……」 「ごめん、意地悪し過ぎた。でもかわいい」 「っ……うるさいです」 「湿布、貼ろう」 とんとん、と腰を優しく叩かれて頭を撫でられる。どうしてこんなにボクの扱いが上手いんだろう。変にムカつきます。 「…名前くんが貼ってください」 「ん」 「お腹空きました」 「はいはい」 「はいは一回です」 「はい」 「――来年もよろしくお願いします」 「こちらこそ」 今年も楽しかったです。 ← / → |