▽19日



「あーあだ名ちんじゃん」


「………」


ぱり、もぐもぐ。ぱり、もぐもぐ。
大学のバスケコート近くのベンチに彼はいた。ポテトチップスを頬張りながら話かけてきたのだ。ついに講義の疲れが幻覚を見るにまで発展したかと頭をかかえそうになる。現実だけれど。


「お疲れー」


「……風邪引くよ、紫…、くん。あだ名ちんって?」


「ナメてんの?大丈夫だし。それと俺は紫原敦。あだ名ちんは苗字名前だったっけー?」


「別に。紫ばら…ね紫ばら。紫くんでいいや。うんそう。俺の名前知ってるんだな」


「ミドチンが教えてくれた。コンビニの人だって」


「そう。紫くんの大学はここじゃないと思うけど」


「室ちん待ち」


「………ああそう」


ぱり、もぐもぐ。ぱり、もぐもぐ。


俺も帰りポテチ買って帰ろうかな。紫くんはお菓子を美味しそうに食べる子である。


「………」


「………」


ぱり、もぐもぐ。ぱり、もぐもぐ。

さて、どうしよう。このまま立ち去ってもいいっちゃいいだろう。しかし俺の足は動かない。去ろうとすれば何故か罪悪感が込み上げてくるのだ。


だから紫くんの前まで歩いて、止まった。
座っててもでかいな


「あだ名ちんも食べる?」


ポテチ、と一枚俺の方へ持ってきた。
ひとつ説明しておこう。
俺はこれからサッカーをするため荷物が多いのだけれどジャンケンに負けて友達の荷物も持っている。小学生がよくやるあれに負けた子と似ているかもしれない。何が言いたいかと言えば両手が塞がっているのだ。あーんされるのはテツヤからだけでいい。今度頼んでみようかなあ


「あ、室ちんだ」


「………?」


ちらりと不意に紫くんの視線が俺の後ろへと移る。俺も振り返って彼の視線を追った。ああ、また扱い辛そうな奴がきたぞ。




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