▽12日



「機嫌いいなお前」


「火神は生気ないな」


「……誰のせいだよ」


「火神のせい」


「……苗字が笑ってっと気持ちわりぃ。なんか、うってなるうって、」


「うっ…!」


「やめろ」


バシッと頭を叩かれた。ひとつ言っておこう。今は講義中だ。まあ教授からは後ろの方だからバレやしない。ただ、火神は講義を聞いておかないと俺より危なすぎるから、心配だ


「火神ってちゃんと日本語理解できてるの?」


「なっ、馬鹿にすんな!つーか日本人だ!Japanese!」


「じゃあテツヤみたいに敬語使ってみて?」


「……なんでだよ」


「あれ、できないんだばかがみー」


「でき、ます!」


「おお、上手くなってる」


「………あたりまえだ…です」


「……ぷ、かわいい」


「あー……やめだ。黒子に怒られたくねぇ」


「ああそう」


ふい、と彼は講義の主役、教授へ目を向けた。これくらいでテツヤは怒らないと思うけれど。


「お前らって喧嘩しねぇよな」


前を向いたまま、突然そんなことを言った彼。手はペンを回して遊んでいる。もう勉強する気ないなこいつ


「喧嘩してるよ」


「いや…なんつーか、見てるこっちがムズムズする喧嘩だろ…」


「…ふーん?」


「ばっ!……っ―てえ!」


覗き込んでやったら、ドンッと脚をぶつけたらしい。結構な人振り向いたぞ


「バカガミだ」


「クソ…後で覚えてろ…!」




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