「神田ー見て見て!俺も新しくしてもらったんだよ。全然会わなかったから言いそびれてたや。どう?似合う?」
ルンルン鼻歌が聞こえてきそうなほどにこにこと笑って近づいてくるのは教団でも付き合いの長いなまえだ。
どうでもいいが、
「テメェいつから後つけてる」
「えっ!最初から!さっきラビと帰ってきたときに見かけたから着いてきたんだ」
「ッチ、帰れ」
俺としたことが気配に気づけなかった。……いや、コイツが単に恐ろしい力を隠しているだけだろう。昔からそうだった。もうとっくに臨界点は越えているはずだ。かくいう俺もだが。。
「ここまで来たんだから一緒に連れてってよ」
「断る」
「…………えー、…………そっか」
「…………あ?」
てっきりもっとしつこく駄々こねると思っていたために、やけにあっさりすぎて立ち止まってしまった。
そして奴は何故か教団とは反対方向へと歩きだしていたのだ。馬鹿なのか、アイツは。
「……クソが」
またフラフラされても、最後になまえを見たからと教団に質問攻めにされるのも御免だ。連れていくしかない。そう覚悟を決めて声をかけた、つもりだった。
「オイ、何処行く気だ」
「…………家、帰るよ」
「…馬鹿言ってんなよ。テメェの家はソッチじゃねぇだろ」
「……わかってる。教団にはちゃんと帰る。でも今日は家に帰る。1日くらい大丈夫」
「はっ、勝手にしろ……俺は行く」
「うん、気をつけてね。次は連れてってよ」
そしてお互いに違う方向へと歩き出したのだ。
覚悟も糞もない。
面倒を消し去るつもりが、自ら面倒な方面へと話をもっていったことに苛々が増してくる。恐らくアイツのあの感じは1日やそっとじゃ帰ってこないだろう。
「ッチ……!」
考え出せば出すほど面倒なことばかりで、そのうちストレスで胃に穴が開きかねない。これからの任務に影響がでても困るのだ。
さっさと今来た道を振り返って、奴の後を追うことにした。
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