04
「うー……ん」
朝、何処からともなく焼き魚の匂いが漂ってきた。隣の田中さんの朝御飯だろう。料理上手だからなあ。
「おい」
「…………」
「起きろ」
「…………、……」
「おい」
「…んー……」
「なまえ、」
「ん……」
「鯖が焼けた」
あぁ、鯖ね。田中さん今日は鯖焼いてんだ……。しかもわざわざそれを俺に伝えに、、
「………………ん??」
ぱちりと開けた視界の中、見知らぬ顔の青年が俺を覗きこんでいた。いいや、正確には昨日知り合ったばかりの、次元を飛び越えてやってきた七瀬遙君だ。
というか、近い。近いよ遙君。早速俺の心臓が足りない。
「……お、はよう」
「鯖は好きか」
「え、まぁ、普通に」
「そうか」
「、うん」
そんな俺の葛藤を知らずに、鯖の質問を済ませた彼は離れていく。同時にむくりと起き上がった俺は自然にそれを目で追っていて、今度こそ心臓が止まった。
「……っ……は、遙君……??」
「?、どうした」
「ど、どうしたって、なに、それ」
「鯖だ」
違うなそっちじゃないな。
菜箸と皿を持っている姿は様にはなっているが、いかんせんそのビジュアルに問題があった。
「鯖はわかったから、その、服はどうしたの」
そう、彼の今の身なりが寝間着姿ではなく水着に俺のエプロンなのだ。
誘ってんのかこいつ。
「そこにある」
「…なら今すぐ着ること。シャワー浴びてくるから、それまでには絶対着ろ!」
言い逃れるようにバンッと洗面所の扉を閉めた。これだけ言っても着てなかったら、俺は我慢しない。
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