6月30日 | ナノ
04


「うー……ん」

朝、何処からともなく焼き魚の匂いが漂ってきた。隣の田中さんの朝御飯だろう。料理上手だからなあ。

「おい」

「…………」

「起きろ」

「…………、……」

「おい」

「…んー……」

「なまえ、」

「ん……」

「鯖が焼けた」


あぁ、鯖ね。田中さん今日は鯖焼いてんだ……。しかもわざわざそれを俺に伝えに、、

「………………ん??」


ぱちりと開けた視界の中、見知らぬ顔の青年が俺を覗きこんでいた。いいや、正確には昨日知り合ったばかりの、次元を飛び越えてやってきた七瀬遙君だ。

というか、近い。近いよ遙君。早速俺の心臓が足りない。

「……お、はよう」

「鯖は好きか」

「え、まぁ、普通に」

「そうか」

「、うん」

そんな俺の葛藤を知らずに、鯖の質問を済ませた彼は離れていく。同時にむくりと起き上がった俺は自然にそれを目で追っていて、今度こそ心臓が止まった。


「……っ……は、遙君……??」

「?、どうした」

「ど、どうしたって、なに、それ」

「鯖だ」


違うなそっちじゃないな。

菜箸と皿を持っている姿は様にはなっているが、いかんせんそのビジュアルに問題があった。

「鯖はわかったから、その、服はどうしたの」


そう、彼の今の身なりが寝間着姿ではなく水着に俺のエプロンなのだ。

誘ってんのかこいつ。

「そこにある」

「…なら今すぐ着ること。シャワー浴びてくるから、それまでには絶対着ろ!」

言い逃れるようにバンッと洗面所の扉を閉めた。これだけ言っても着てなかったら、俺は我慢しない。




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