10
「ただいまーって、、バイトか」
蒸し暑くなってきた今日この頃。季節はすっかり夏だ。あれから遙君はバイトに受かって俺も毎朝仕事へと向かい、それとなく平和な日々を送っている。
しいて問題があるとすればそれは俺の理性だ。だってあの子いい身体してるんだもの。その上すぐ脱ぐし、水着着てるし。ツッコミを入れるのもそろそろ疲れてきて最近はスルーしている状態だが。もちろん、目に焼き付けることは忘れないけれど。
あとは、そうだな、、
朝の水風呂はどうにかならないものか。。
出勤する前に彼の安否を確認すること(湯船から引っ張りあげること)が日課になりつつあるのだ。
「まあ、いいんだけど」
ばたん、と冷蔵庫を開けて彼のことから夕食のメニューへと頭を切り替える。オムライスでいいか。
早速ごそごそばたばた材料やら必要なものを用意して、まずは野菜からだと玉葱に包丁をいれた。と同時、ガチャンとぼっろい玄関が開いた。
どうやらほんの数分前まで頭を埋めていた人物─遙君が帰ってきたようだ。
「……おかえり、遙君。バイトは?どう?」
「疲れる」
「あー、まぁそういうもんだって」
トントントンとリズムよく玉葱を刻みながら、素直な感想を言った彼に苦笑する。俺もバイトはよく疲れた疲れた言ってたな。就職したってそれは変わらない。
「なまえ、」
「え、なに?」
珍しくそわそわと彼が近づいてきたと思ったら、
「もらった」
「?……貰った?」
ぴら、と何か薄っぺらいものを見せてきた。
ゆっくりとそれに視線をやれば、それは近くの市民プールの無料チケット。ご丁寧に二人分。
これはもしかしなくとも、
「行きたい、とか?」
「そのために貰ってきた」
「じゃ、じゃあ……今度の休みに行こう」
「わかった」
断る理由なんてこれっぽっちもないため、OKしたが、プール、か……。。
理性が試される気がするのは何故だろう。
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