伍◇悪戦苦闘
部屋から出られるようになった私たちは、家事を手伝おうと張り切った。
ずっと暇だったんだもん、そりゃ、やる気満々で挑みましたよ。
…でも、忘れてた。
この時代、電気がない。
つまり、家電がない。
「冷たっ!もう殆ど手足の感覚がないんだけど」
洗濯するのも自力だ。
真冬の水の冷たさを舐めてた。
霜焼けできそう…。
「頑張ってください!あと少しです!」
千鶴ちゃんは慣れているみたいで、黙々と洗濯する。
10歳以上も年下の女の子に励まされる私って…。
なんだかんだ言いながら洗濯を終えると、次は料理。
ここでも、もちろん水道もなければ、ガスもない。
井戸から水を汲まないといけなし、火は竈だ。
始めは興味津々に竈を覗いて、火を付けようと頑張ったけど。
………無理だ!何でつかないの?
一向に変化のない竃に、ガスコンロが恋しくなる。
「小夜さん、いいよ貸して?俺がやる」
ずっと側で見守りをしていた平助くんが、痺れを切らして変わってくれた。
「ごめん、お願いしていい?」
「おう!こうやって見ると、やっぱり小夜さんって未来から来たんだなって思うよな
」
話しながら、サッと火をつける平助くん。
「すごい!魔法みたい!」
「お、おう…!また困ったら呼んでくれよな!」
感動して、思わず平助くんの手を握りブンブン振り回す。
ちょっと照れたように笑う平助くんが可愛かった。
食材を洗って切るのは、現代と同じだから難なくできた。
味付けは、江戸出身の千鶴ちゃんにお任せ。
幹部の多くも江戸出身だから、慣れ親しんだ味になるだろう。
そうして作った夕餉は、思いの外、好評だった。
「美味いぜ!江戸の味だな!」
「ここにきてこんな上手い飯を食ったのは初めてだ。
やっぱり女が作ってくれると違うもんだな」
皆が褒めてくれて、千鶴ちゃんと2人、照れ笑い。
……まぁ、味付けは私じゃないんだけどね。
やっぱり人のために何か出来るって嬉しいよね。
悪戦苦闘しながら過ごした一日はあっという間。
手はガサガサだし、あちこち筋肉痛だし。
でも、この疲労感がどこか心地いい。
生きてる、って感じがする。
千鶴ちゃんと並べて布団を敷いて、横になる。
一瞬で意識が遠のく、今日はいい夢が見れそう。
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