きっと、いつか | ナノ


陸◇雪村千鶴


井上源三郎と名乗る男性に連れられ、部屋へ戻る。
その道すがら、彼は先程の男性達について説明してくれた。

局長の近藤勇。
紫色の目の男性が土方歳三、副長。
眼鏡をかけた男性が山南敬助、総長。

そして各組の組長たち。
最初に自己紹介してくれた、沖田総司。一番組組長。
緑の鉢巻の男性は永倉新八。二番組組長。
白い襟巻きの男性が斎藤一。三番組組長。
ポニーテールの少年が藤堂平助。八番組組長。
赤毛のお兄さんが原田左之助。十番組組長。
そして、井上さんは六番組組長らしい。

私が新選組の中で知っていたのは、近藤勇、土方歳三、沖田総司の3人だけ。
他の人たちの名前を知って、目の前でその人たちが生きているのを見て、改めて幕末に来てしまったのだと実感する。



そうこうしているうちに、さっきまでいた部屋に戻ってきた。

中には、看病をしてくれていた少女が待っていた。
彼女は私を見て安堵したのか、泣きそうな顔をする。

「あの、あなたが看病してくれたのよね。
本当にありがとう、とても助かりました」

「いえ、そんな!元気になられてよかったです」

純粋で真っ直ぐな瞳に見つめられる。
14,15歳くらいかな?

「突然なんだけど、今日からここでお世話になることになりました。
大門小夜と言います、よろしくね。
女の子がいてくれてよかった、心強いわ」

「あ、えっと、その……」

自己紹介をすると、目の前の少女が急に慌て始める。

「………?」

何かマズいことでも言ったのかと思い焦っていると、井上さんがフォローしてくれた。

「彼女はちょっと事情があって、ここで預かってる子でね。
男所帯に女の子がいるのは色々と不都合があるから、男の子の格好をして過ごしてもらってるんだよ。
女の子だと言うのは、私たち幹部しか知らない秘密だからね」

彼女も何やら訳ありらしい。
こんな若い子が男所帯に一人、不安だっただろうな。

「あの、雪村千鶴と言います。
私も女の人が来てくれて、すごく嬉しいです。
よろしくお願いします!」

そう言ってペコリと頭を下げてくれる。
………うん、可愛い。
どう見ても女の子にしか見えないんだけど…。
男装の意味、あるのかしら?

何はともあれ、何も知らない何も分からない場所で
同性がいるのはとても心強い。

「私もちょっと事情があって…。
ここで生活していくうえで千鶴ちゃんに色々迷惑かけることもあると思うの、ごめんね。
こんな私だけど、仲良くしてくれると嬉しいな。よろしくね!」


自己紹介し合う私たちを、井上さんが優しい眼差しで見守っていた。



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