06

綺依は達幸から視線を外した。

「もう少し具体的に言ってくれないと分からない」

視線の先には、面談から戻ってきた琉依の姿。あれがこちらに来ると余計に話がややこしくなりそうだなと思っていたら、彼はドア付近に集まって喋っていた女子たちに引き止められていた。
綺依の視線を辿り達幸も琉依に気付いたが、すぐに綺依に向き直り

「琉依への当たりが強かったり、琉依が心配してんのに何も言わなかったりするんだろ。琉依が困ってる」

と答えた。綺依の言った"具体的"とは、実例を挙げてほしいという意味だったが。

「抽象的なのはもういい。で、お前は俺たちの何がわかるの?
琉依が困ってるのは俺のせいじゃなくて、琉依自身のせいだろ」

綺依の返答にどう返せばいいのか思いつかず、達幸は言葉に詰まる。
「何がわかるのか」と言われると、正直ほとんど分からない。琉依からの話でしか知ることができないから。
でも、琉依自身のせいで困っている、というのは綺依が助けを出さないからなのではないだろうか。


さて、面談を終えて教室へ戻ってきた琉依は、教室に入るなり女子の集団に捕まった。

「ねえ、あれ修羅場っぽくない?」

そう指差された方を見ると、綺依の机の横に達幸が立っていて、2人で何か話しているようだった。
綺依は完全に不機嫌そう(そして面倒そう)な表情をしているし、確かに不穏な空気が流れている気もする。

「なんかヤバそうだし、るいくんどうにかできない?」

尋ねられて琉依は困り顔で答えた。

「僕はそっとしておいた方がいいと思うけど……。たっちゃんはわからないけど、綺依は機嫌悪そうだし」
「えー、でも西内とは仲良いでしょ?それとお兄さんの2人なんだしなんとかしてよ〜!」
「うーん……」

女性陣の圧力に押され、渋々自分の席へと戻る琉依。綺依と達幸を取り巻いていた剣呑な空気は、彼が2人のそばへ来たことで少し和らいだ。
綺依に食ってかからんばかりの勢いだった達幸は、琉依の姿を見て気まずそうに口を噤む。

「2人で何の話してたの?」
「ええと、それは……」
「俺に、琉依をもっと大事にしろって言ってきた」

綺依の答えを聞いて、琉依は不思議そうな顔で達幸を見た。彼がどうしてそんなことを綺依に言ったのか、達幸の心配を知らない琉依には全く理解できなかった。

>>続く



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