12
重たい空気は土日を経てほんの少し晴れたが、琉依はまだ背負いこんだまま翌週の月曜の朝を迎えた。
学校へ向かって隣を歩く綺依は何事もなかったかのようにいつも通りで(実際、綺依自身については思い悩むこともないのだが)、少し恨めしそうに見上げては、目を逸らす。
綺依と同じ大学へ行きたいのは山々だが、勉強が苦手な琉依にとって、その道のりははるかに遠いもののように思えた。
教室に着き、椅子に座ってもなお、琉依は浮かない顔をしていた。
綺依はそんな琉依に目もくれず、机上に配られていた英語の朝の課題のプリントを黙って解いていた。
「おはよ、あれっ何かあった?」
少し遅れてやってきた達幸が、目ざとく琉依の暗い様子に気がつく。一瞬ちらっと綺依を見てから、声をひそめて琉依に尋ねた。
「あ、たっちゃんおはよ。特に何も無いけど……勉強しなくちゃいけなくって」
琉依は達幸に目を遣るが、すぐに机の上のプリントに目を落とす。
「勉強? ああもしかして、こないだの進路相談でなんか言われた?」
「僕と綺依じゃ成績が全然違くて、今のままだと同じ大学に行けないんだって。綺依が勉強できるのは知ってたけど……」
まさかそんなに差があるとは、とため息をつく琉依に、達幸は違和感を感じた。
目の前の、この勉強をやりたくなさそうな琉依と、その前の席で課題をやる綺依は双子だという。
双子だから、生まれたときからずっと同じように生きてきたのだろうが、今はもう大学受験を控えた高校三年生だ。
大人も同然と言えるだろう。
「それ、同じ大学に行かなきゃいけないのか? 双子だから?
もっと好きに、別の大学に行ったっていいんじゃ」
思わず口をついて出た達幸の言葉に、琉依は顔を上げた。
真っ直ぐに達幸を見て、首を左右に降る。
「僕が綺依と一緒に行きたいの」
その返答に、達幸は胸の内にモヤモヤとしたものが広がるのを感じた。
>>続く
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