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「なんでそこまで……」

達幸が言いかけた言葉は、ちょうど鳴り始めたチャイムにかき消された。
教室に担任が入ってきたのを見て、達幸は自分の席に着く。
2人の会話は、もちろん綺依に聞こえていた。
ついこの間は、双子だから琉依を大事にしろだとか言っていたのに、今日は双子だからといって同じ大学へ行くのはおかしいとばかりに非難している。
矛盾しているように思える達幸の言い分に、彼が何を考えているのかさっぱり分からないが、実に厄介で面倒そうだという思いが、綺依の中で強まった。

昼休み。さっさと昼食を食べ終えた綺依は、職員室を訪れていた。
向かったのは、担任の机。
教材を整理していた担任は、音も立てずにスッと背後に立った綺依の気配を感じ取り、びくりと肩を震わせ振り向いた。
綺依の姿を認めると、安堵と困惑が入り混じった声で、彼に尋ねかける。

「どうしたの?」
「昨日、義父(ちち)に連絡したそうですね」

無表情で、綺依は返した。

「え、ええ……三者面談のことで少し」
「聞きました。志望校を考えておくようにという、念押しでしたね」
「お家の方にもご相談したほうがいいかと思ってご連絡したんだけど、どちらにご連絡したらいいかわからなくて……」
「もう過ぎたことなので仕方ないですが、あの人をあまり巻き込みたくなかった。
まあ、母親を巻き込んだらそれはそれで面倒だけど」
「……ごめんなさい」

綺依には全く彼女を責めているつもりは無く、ただ思うことを淡々と述べているだけであったが、その冷ややかさが仇となっていた。
綺依の言うことに、担任は徐々に縮こまる。
萎縮する彼女に少し眉根を寄せ、それでも綺依は続けた。

「三者面談までに志望校は決めておきます。
琉依にもよく言い聞かせて、勉強させます。
三者面談には義父が来ます」
「そ、そう……。わかったわ。
何かあれば先生も力になるから、何でも相談してね」
「ありがとうございます」

やや一方的に喋る綺依を、不安そうに担任は見つめていた。
しかし、彼に何かを強く言えるだけの勇気が足りず、当たり障りのないことを言うに留まる。
綺依は軽く頭を下げると、そのまま黙って職員室を後にした。


一方、綺依が出て行った教室では、綺依の椅子に後ろ向きに座り、朝の続きを琉依に話しかけていた。

>>続く


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