Shiny Honey | ナノ
03

「そういえば今日、水静が――」
「水静がこの前のテストで――」
「懲りずにまた水静に告白してきたやつが、手酷くフられてさ――」

高校に入ると、登下校時の話題は日織が話す水静のことばかりになってしまった。
口を開けば「水静が、水静が」を繰り返す。
それが悪意ない行いだということは恒介にもわかる。学校での水静のことを知らない恒介に、話して聞かせようと日織はしているのだ。

日織は水静と同じクラスになった。
クラスは成績順で決められ、一番賢いクラスに水静は余裕で、日織はギリギリで入れたのだった。
日織とはあまり成績が変わらないから同じクラスになれると多可をくくっていた恒介は、そのギリギリのところでクラスには入れなかった。
日中ずっと日織が水静と一緒にいると思うだけでも憂鬱なのに、その上更に水静の話を聞かされることは恒介にとって苦行のようなものだった。

日織の話によれば、水静は相当モテるらしい。
そして相手をことごとくフるらしい。
そして新聞部がつけた呼び名が「薔薇の君」。高嶺の花ということだろうか。
何にしても、あの冷ややかな視線で見られたいからとわざわざ告白しに行く奴らもいるというのは、どこから聞いた話だったか。
ともかく水静がああも次々と告白を断るのは、他に心に決めた人がいるからじゃないのか。
そしてそれは、日織なのではかいかと恒介には疑わしく思えた。
当然、日織はその可能性に全く思い至ってはいなかったが。

「お前ってさ、噂には敏感なのに、自分のことには鈍感だよな」

恒介の呟きに日織は聞き返したが、恒介はため息をついただけだった。


そんなことが繰り返され、はや3年経ったある日のこと。
相変わらず日織と同じクラスになれなかった恒介は、いつものように日織が話す水静の様子を聞いていた。

「あ、恒介ってうちのクラスに転校生来たこと知ってる?」

ふと思い出したように、日織が尋ねた。

「転校生? こんな時期に?」

3年生になって少し経った頃だった。
学期の初めではなく、まして3年生にもなって転校してくるとは何かあるのだろうか。

「その転校生、結崎朔っていうんだけど。
寮の部屋も教室の部屋も、水静の隣なんだよ」
「へぇー、すごい偶然だな」

まさかその転校生、水静を追いかけてきたとかじゃあないだろうな。
そう恒介が疑っていると

「驚くなよ……」

日織が声を潜めてこう前置きをした。
神妙な空気が辺りに流れ、恒介は固唾を飲んで次の言葉を待つ。

「水静が結崎に一目惚れしたんだ。
あの水静が!」
「!?」

水静が一目惚れをした?
それも、転校生に?
水静は日織が好きなのだと信じきっていた恒介には到底信じられない発言だった。

>>続く

恒介は2年間も耐え抜きました←


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