Shiny Honey | ナノ
01

"いつも一緒にいたかった となりで笑ってたかった
季節はまた変わるのに 心だけ立ち止まったまま"

3年前の春に味わったのは、まさにこの歌詞と同じような寂寥(せきりょう)だった。

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中学の卒業式からの帰り、賀集恒介はいつものように親友の江嶋日織と一緒に通い慣れた通学路を歩いていた。
卒業式ということもあり、家族と共に帰った生徒も多かったのだろう。
道を歩く人影はまばらだった。

「ちょっとは迎えに来てくれたっていいのにな」

恨めしそうに、恒介が呟いた。
それに同調し、日織も頷く。

「学校を卒業するわけじゃないんだから行かなくてもいいでしょって、ヒドイと思う」
「それよりもアンタを私立に行かせなきゃいけないんだから、稼がなきゃならないのよ!ってな」
「そうそう」

2人はそれぞれ母親の真似をしたあと、顔を見合わせて声をあげて笑った。

私立の中等部に通っていた2人は、いわゆるエスカレーター組である。
進学先は同じ学校の高等部。
校舎も中等部と隣接しているのだから、何も目新しいことなどない。
4月からもまた、通い慣れたこの道を歩くだけだ。

とはいえ、公立中学から一般選抜でやってくる新入生がいることは、少し新鮮だが。

「そういえば、お前の友達は高等部受かったのか?」

一般選抜といえば、恒介には1つ思い当たる節があった。
それは日織の幼馴染みのこと。
彼と恒介とは中学1年生からの付き合いで、日織はそれより前の小学生の時ここに引っ越してきたらしい。
そして引っ越す前からの幼馴染みを、日織が同じ高校に来るようにと誘ったのだった。

「あぁ、受かったって。
寮から通うらしいからあまり会わないかもしれないけど、仲良くしたげてよ」

日織の返事を聞いて、恒介は少し安堵する。
高等部の寮は学校からほど近く、彼らの通学路とは反対方向にある。
ということは、4月から日織の幼馴染みを加えた3人で学校に行くことにはならない。
変わらず2人で通えるということだ。


そんな恒介の安心が覆されるまで、そう時間はかからなかった。

高等部へ入学するまでの春休みのある日。
日織の家に呼ばれた恒介は、洋々と彼の家へ向かった。

「はよー。
思ったよりも早かったな」

呼び鈴を鳴らすと、日織がドアを開けて出てくる。

「で、今日は何?」

日織の後について階段を上りながら尋ねた。
彼から電話を貰ったとき、用件を聞くのを忘れていたのだった。
彼も特には言わなかったから、さほど重要でもないかサプライズかのどちらかだとは思うが。

「あれ、言わなかったっけ?
水静が来てるから、ついでに紹介しておこうと思って」

みなせ? それって確か、日織の幼馴染みの……。

階段を上りきってすぐにある日織の部屋。ドアを開け放した入り口の向こうに、その少年は座っていた。

>>続く

キリが悪いところで終わってますが、麗しの方も更新したくて……。

冒頭の歌詞は、プリンセス・プリンセスの"M"より引用。

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