*June Bride

日本は梅雨に入り、雨が降り続く毎日。

琉依は毎朝、カーテンを開けては溜息をついている。


「おにぃ、今日も雨だょ……」


 せっかくの休日なのに、これじゃあどこにも行けない、と目に涙を浮かべながら綺依を見上げる。


「家で大人しく寝てろ」


 綺依はそう言い置いて、さっさと何処かへ行ってしまった。

 残された琉依は二度寝する気にもなれず、テレビを見ることにした。

つけてみると、ちょうどやっていたのは"ブライダル特集"。

おススメの式場やウェディングドレスなど、とても華やかである。


「ジューンブライドかぁ。いいなぁ、僕もおにぃと結婚できたら――」


 琉依の頭の中は、めくるめく妄想でいっぱいに。頬は緩み、目はどこか遠いところを見ている。


「――琉依、何やってんの?」


 不意に呼ばれ、振り返るとホールケーキを両手に抱えた綺依が。


「あ、おにぃ! 別に何もしてないよぅ」

「嘘つけ。顔がにやけてる」


持っていたケーキを机に置くと、琉依の頬を左右に引っ張った。


「何考えてたか、言ってみ?」

「へ、へっほんひひ!」

「結婚式?」


 綺依が手を離すと、赤くなった頬をさすりながら琉依は答えた。


「6月だから、ジューンブライドの特集やってたの……」

「ふーん。で、何でそんなににやけてんの?」

「あ、それは……」


 いくら兄のことが好きだとはいえ、同性だし兄弟だし、結婚したいだなんて到底言える訳もなく、琉依が黙ったままでいると


「俺との結婚式でも想像してた?」


とにやにやしながら綺依が尋ねた。


「だって、おにぃのこと好きだから……」

 観念してそう琉依が言った瞬間、綺依にキスをされた。驚いて見上げると、


「ケーキ、一緒に切ってくれるよな」


とナイフを手渡された。その意図を察した琉依は、満面の笑みを浮かべて受け取る。


「ウェディングケーキ、入刀だよね」


 そして二人でナイフを握り、ケーキを切り分けた。

 二人のウェディングケーキは苺と桃のショートケーキで、琉依の好みに合わせて甘めに仕上がっていた。


「やっぱり、おにぃのケーキおいしい!」


 琉依は笑顔で頬張り、ほっぺたを手で押さえる仕草をする。

もう一口食べると、すかさず綺依が唇を塞いだ。口内のケーキを舌で絡めとり、ちゅっと唇を吸って離す。


「うん、甘い」


そう言って、琉依を抱きしめた。


「琉依――誰にも渡さないから」


 昏(くら)くひずんだ独占欲を囁かれ、甘く悶える琉依。


「おにぃ、大好きぃ……」


 しどけなく綺依の首に腕をまわし、唇を薄く開く。綺依はその口許へケーキを運ぶと、舌を挿し込み絡ませた。唾液とケーキが、混ざり合い、くちゅくちゅという水音が室内に響く。

 そうこうして、二人がケーキを食べ終わったのは一時間後であった。


「おにぃは僕の旦那さんだよね?」


琉依が訊くと、綺依は彼を抱き寄せて


「当たり前だろ」


と返したのだった。


-end-

2012年6月の拍手御礼SS。
今読み返してみたら、何だか頭に虫がわいていたようで(・∀・)←

まぁ、ジューンブライドだしたまにはこういうのも……。

てか、ブライドのスペル合ってるの?←ぇ

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