*ホワイトデー企画'12


綺依のホワイトデー


3月14日ホワイトデー。
宗真綺依はとあるデパートの地下をうろついていた。
目的はバレンタインに愛する弟からもらったチョコレートのお返しを買うためだ。
といっても、何を買うか明確に決まっている訳ではない。

しばらく売り場を歩いていると、人だかりが出来ている店を見つけた。
よく見ると、カップルの集まりらしい。
ホワイトデーってカップルでチョコを買いにくる日だっけ?とひとりごちながら佇んでいると、不意に声をかけられた。

「あのー、もしかして1人ですか?」

見ると、自分と大して変わらないだろう年齢の少年がいた。

「……1人だけど?」

不審に思いながらも返事をする。
すると少年はいきなり、驚くようなことを言い出した。

「俺とカップルのフリをしてくれませんか?」

たっぷり一呼吸分置いて、綺依は返した。

「はぁ?!」

「あそこのチョコレート、ホワイトデー限定で半額になるらしいんです。
でも俺1人だから買えない。なので誰かとカップルのフリをしようと」

それでカップルが集まっているのか、と1人で納得する。
しかし、そこで何故俺なのだろうか。他にも客は居るだろうし。
確かにカップルは多いが、1人の客も少なくはない。

「何でそれを俺に頼むわけ?」

いささか刺々しい言い方の綺依に、少年は怯えたのかビクッと肩を震わせた。

「あ、えっと、他に同じくらいの年齢の人が見当たらなかったので……」

「それだけの理由で男を選ぶか、普通」

自分の事は棚に上げて、"こいつホモ?"とあからさまに嫌悪の目で見る綺依。
幸か不幸か、相手の少年は自分に向けられている視線にそんなものが込められているとは気付かないようだ。

「まあ、お互いにたいした損は無いしな。
カップルのフリ、してやってもいい」

結局綺依は折れて、少年とカップルのフリをすることとなった。

「ありがとうございまーす!あ、谷本榎那太(たにもとかなた)です」

「……宗真綺依」

「何か珍しい名前ですね」

名前も名字も、と榎那太は言う。
それを聞いて綺依は「"かなた"っていう名前も、現実では初めて見た」と心の中で思ったが、口には出さなかった。

それから2人はカップルの列に並び、しばらくして順番がまわってきた。

「えっと、このチョコ2つください。あ、カップルです」

榎那太の発言に、当たり前だが店員は訝しげな表情になった。

「カップル――ですか?」

「はい」

「あ、分かりました。では半額となります……」

店員は最後まで腑に落ちなさそうだったが、一応チョコレートを買うことには成功した。

「じゃあこれ、そーまさんの分ね。協力してくれてありがとうございました!」

「いや、別に……」

またどこかで会うかもしれませんね〜、と榎那太は言い残して雑踏の中へ消えていった。後に残った綺依も人の流れに押し出されるようにして、店を後にした。
ふと右手に持ったチョコレートの袋を見る。そして思った。

「よく考えたら、プレゼントを半額で買うってどうなんだ……?」



-end-



>>あとがき

なんとか間に合いましたっ!
どことなく2人とも雰囲気が違う気がしますが……それを言っちゃおしまいです。

ちなみに、オマケ↓

「琉依、ほらバレンタインのお返し」

「買ってきてくれたの?ありがと!」

「でさ、それを買うときに変な男子から声かけられた」

「え……ナンパ?」

「そうとも取れるかもしれないけど、多分違う。
カップルのフリをさせられた」

「何それ、変なのぉ」

「だろ?世の中にはあんな奴も居るんだな」

「そーだね。気をつけなくっちゃ!」



あれ、榎那太が変質者扱いされてる……?
ま、いっか←



NHKside(榎那太目線)はこちら
あんま内容変わらないけど、見てやってください。

ではっ!

----------------

というわけで、2012年分のホワイトデー企画でした。

今年は多分書かないからね←








名前:

URL:

コメント:

編集・削除用パス:

管理人だけに表示する


表示された数字:




[ prev / next ]
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -