08

いつの間にか、夏が近づいてきていた。梅雨の時期の晴れ間は、じめじめとして蒸し暑い。
途中で立ち寄ったコンビニでアイスキャンデーを買い、それをかじりつつ日織は友人と2人で帰り道を歩いていた。

「あっつぅー……」
「もう真夏だろ、この暑さ」
「寮の奴らは良いよな、学校から近くて。俺の家もあれだけ近ければ良かったのに」

ブツブツ文句を言いながら、強い日射しが照りつける坂を上がる。だが、次第に喋ることも億劫になってきた。しばし双方とも無言になり、アイスを食べることに集中する。

やがて二人が坂を上りきると、目の前を真っ黒な外車が走り抜けていった。車が起こしていった風にあおられながら、2人はその場に立ち尽くす。しばらくして顔を見合わすと

「今のって、もしかしなくてもアイツだよな」
「ああ、あの車は確実にアイツだな」
「……俺もクーラーの効いた車に乗って帰りたい」
「……そうだな」

そう言って、恨めしげに車が去っていった方向を見やる。ふと思い出したように日織の友人が口を開いた。

「そういえば日織って、転校生と仲良いんだってな」
「結崎? うん、仲は良いな。席が水静の隣だからさ、よく喋る」

日織が返すと、友人は声を潜めて

「その転校生に関して、ちょっとした噂があるんだけど」

と告げた。噂と聞いて日織は頭の中で検索をかけてみたが、朔に関するものは一つも思い当たらなかった。校内の噂には敏感な彼だが、知らないことがあったとは一生の不覚だなと考えつつ

「どんな噂?」

と尋ねる。

「さっきのアイツ――青城が転校生に目をつけたらしい」
「マジで!?」

先ほど通りすぎていった外車に乗っていた生徒。青城和寧(せいじょう・かずね)といい、財閥か何かの息子らしい。水静ほどではないが、それなりに整った顔立ちをしていて、男女関係なく今まで付き合っていなかったことは無いという話だ。

――これは気を付けた方がいいな。日織の胸に一抹の不安がよぎった。

>>続く

新キャラ出ました。
青城和寧です。
九葉史上、最大の名前負けキャラ。
平和の「和」と丁寧の「寧」の字を持った彼が、水静と朔にどう関わっていくか、お楽しみに。

ちなみに、今回出てきた日織の友人。佐伯くんと違って名前無いくせに、彼はだいぶ先の話で出すかもしれません。

ではでは……


名前:

URL:

コメント:

編集・削除用パス:

管理人だけに表示する


表示された数字:




[ prev / next ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -