ウエディングドレス

2023.12.17
Dozen Rose FES.2023 千代に桜咲くDR2023@東京ビッグサイト にて本になります!
(2024.01.07インテックス大阪のイベントにも持っていきます)

サイトに掲載済の【最終章18~20話】の加筆修正(約4.5万文字)+書き下ろし(約4.5万文字)の計約9万文字の本となります。


【書き下ろし詳細】
 ●二人の結婚式編
 ・マドンナちゃんのウエディングドレス姿に松田さんがバグる話
 ・挙式前から大号泣する男たちの話
 ・リングボーイを○○くんが務める話
 ・挙式で永遠を誓う話
 ・マドンナちゃんのブーケトスの行方の話
 ・披露宴開始前から大号泣する男と大激怒する女たちの話
 ・オープニングムービーに司会のお姉さんが困り果てる話
 ・カオスすぎる披露宴の話
 ●初夜編(R18)
 ・今日がとっても楽しかった話
 ・二人のはじめて≠フ話
 ・松田さんがずっと待っていた話
 ●婚姻届提出編
 ・初夜翌日の朝の話
 ・苗字が変わった話
 ●エピローグ
 ・数年後の話




↓書き下ろしの内、約3千文字を掲載↓
(サイト掲載用に行間等は変えております。)




 結婚式編 - 前編 -
  美しいひと



 ──数ヶ月後。

「さ、完成ですよ」
「…わあ、」

 東都プリンスホテル。新婦控え室。

 大きな鏡に映った自分自身の姿に思わず感嘆の声が飛び出した。
 傍にはこのドレスを一緒に選んでくれた親友がいて、「あ、アンタ…本当に綺゛麗…」とグズグズ鼻を啜っていた。

「廣瀬ちゃん…ありがとう」
「とってもお似合いですよ」
「ありがとうございます」

 鏡の中には純白のウエディングドレスを着た白薔薇の乙女がいた。

 上半身はシンプルで、細かいビジューの付いた布がぴったりと細い体躯にフィットしている。腰から下にかけては長い布が幾重にも折り重なっており、長い裾は床に半円状に投げ出されていた。所謂ロングトレーンタイプのドレスである。

 長い艶やかな髪はアップに結われており、耳の横から後れ毛が数本くるくると飛び出している。
 頭の上には大きなティアラがキラキラと眩しく輝いていて、その後ろから半透明のベールが腰あたりまで垂れていた。

 メイクスタッフにより完璧に施された化粧は普段の美貌を色濃く強調していて、キラキラ光を反射するパウダーが、薄ピンク色のチークが、真っ赤なルージュが、そして星屑を閉じ込めたような大きな瞳が純白のドレスに色を添えていた。


 本日の主役は、この豪勢なドレスに負けない美貌を持つたった一人の女だ。

「本当にお綺麗です」
「ふふ…嬉しい」

 本日、マドンナちゃんは結婚する。
 八年間一途に想い続けてきた男と。

「そろそろご新郎様がお見えですよ…ほら、」

 タイミングよくノックの音が聞こえて返事をした。

「私は外のスタッフと最終確認をしてきますので…しばらく待機しててくださいね」
「わかりました」
「新郎様どうぞ入ってください。ご新婦様本当にお綺麗ですよ」
「…ザス」

 スタッフと入れ違いに入ってきたのは、白銀のタキシードをピシッと着た男の姿。

 いつも無造作にセットしている癖毛は片側だけ後ろに撫でつけられていて、薄らと化粧もしていた。
 いつもよりキリッと引き締まった眉と、いつも通りの深い色の瞳にきゅん…と胸がときめき、天使のため息みたいな吐息が零れた。

「素敵…」
「…そういうのは、コッチが言ってからにしてくれよ」

 どこか照れたような、困ったような顔にきゅん…と再び胸がときめいた。
 どきどきと胸が高鳴り、未だに傍でグズグズ鼻を啜る親友の腕をきゅ…と握った。

「なに」
「廣瀬ちゃんどうしよう…ちょっと緊張がやばい」
「…あ? 廣瀬? 何でいるんだよ」

 ここで松田がようやくカノピの隣でグズグズする廣瀬の存在に気が付いた。
 部屋に入った瞬間から今まで、部屋の真ん中で咲く大輪の白薔薇に釘付けだったからだ。

「アダシがドレス選んだんだから良いでしょ」

 さて廣瀬は未だにダミ声で喋りながら、しかしギッと松田を睨んだ。

 別に最初から廣瀬にドレス選びを頼んだワケではない。
 一番最初は松田を連れて行ったのだ。

 しかし何を着ても松田は「…おお」しか言わないロボットになってしまったので、

『廣瀬ちゃんごめん、ドレス選びに付き合ってくれない?』
『え、いいけど…松田は?』
『何着ても「おお」しか言ってくれない…』
『なんで?』
『知らないわよ。家帰った瞬間「今日の記憶が全部無ぇんだけど…」って困ってた。私の方が困っちゃった』
『アンタのドレス姿見て脳が壊れたってこと?』
『知らないって。…とにかく、頼める?』
『ウケてる。イーヨ』

 ということになり、またファッションに強い交通課のもう一人のギャル──宮本由美も連れてドレスを選びに行った。

 交通課ギャルコンビはとてつもなく頼もしかった。

『ロングトレーン一択』
『マーメイドラインはどうです?』
『いやAラインっしょ。袖は付いてない方がいいわね、この子腕細いから。胸元はそんな開かなくていい。あとベールは…』
『ティアラにロングベール一択』
『それ』
『ネックレスはこの大粒のヤツがいいですね。…ピアスは…』
『これがいい。これにしなアンタ。アタシ自分の結婚式ん時小振りのにして後悔したからアンタ大粒のにしな。アンタだったら顔負けないから大丈夫』

 プランナーのお姉さんに注文を出しまくり、出されたドレスにケチをつけまくり、髪型も「こんな感じが一番似合う」とカタログを持ち込み、ティアラもネックレスもピアスも全て決めてくれたのだ。

 マドンナちゃんはずっと「ほええ…」と口を開けたまま着せ替え人形になっており、時折「アンタこれとこれならどっちが好き?」と聞かれた時のみ「こっち!」と指をさすだけのロボットになっていた。

 しかしそのお陰でマドンナちゃん好みの、しかも一等似合う素晴らしい出来になったのだ。

「どう松田。アタシと由美タンの力作。…写真で見るより何倍もいいでしょ」

 ようやく泣き止んだ廣瀬がフフンとドヤ顔で胸を張った。

 松田は「…おう」と頷き、同時に「本当に前もって写真を見ておいて良かった…」と思う。

 カノピのドレス試着だけで脳が壊れた男が、結婚式当日に完璧に仕上がった姿を見て脳を壊さないハズがない。
 そう考えた廣瀬によって、マドンナちゃんの試着の時の写真とヘアメイクの練習の時の写真を毎日一時間見ることを強要されていたのだ。

 ので、今こうして大輪の白薔薇になった彼女の姿を見てもどうにか理性を保てている。
 策士・廣瀬による素晴らしい作戦が成功した瞬間だった。


「じゃアタシは出るから。あとは二人でごゆっくり」
「え、ギリギリまでいればいいのに」
「メイク直さないとさすがに無理だもん。…また後でね」

 コツン、とキラキラのパウダーを振った肩を小突いてから廣瀬は出て行った。どうせまた式で泣くんだろうな…とか思いながら。



「…………」

 さて松田は改めて目の前の女をマジマジと眺めた。

 美しい女だとは常々思っていたが、本日の彼女はそれを軽く凌駕していた。
 ニンゲン離れしたガラス細工、という表現が一番しっくりくる。それがキョトン…とした表情でコチラを見上げてくるのだ。

 フと急に、小さいころに大切にしていた綺麗な石を思い出した。
 道端に落ちていた、ツヤツヤしていて丸っこくて、太陽の光を反射してキラキラ光る石だ。

 今思えばアレはただのどこにでもある石だったし、今同じものを見てもなんとも思わないだろう。
 しかし、小学生の自分はそれを見つけた時にいたく感動し、部屋の引き出しの一番上に大切にしまい、時折思い出したかのように取り出して口を開けたまま何時間も眺めていた。

 目の前の女はまさに其れだった。
 今スグに攫って誰の目にも触れないところで自分だけのコレクションにしてしまいたくなるような。

 そんな、宝石みたいな女が本日、名実ともに自分のものになる。

「……本当に、綺麗だ」
「…ありがとう」
「やっぱ…俺にはもったいねえな」
「そうかな」
「そうだろ」
「…陣平も、カッコいいよ」

 ガラス細工の白薔薇が緊張したように微笑んだ。

 これに松田は「ン゛、」と喉を詰まらせ、それから困ったみたいに天井のシャンデリアを見上げた。
 最上級の女から告げられる「カッコいい」ほど嬉しいものはなかったのだから。

 ので、「ッッッシャアアア」と叫ぶもう一人の自分を必死に黙らせながら、精一杯カッコつけた表情で「サンキュ」と告げ…再び「カコイイ…」とめろめろする白薔薇に「助けてくれ~~~~」と背中に汗をかいた。


 本日は。
 そんな二人による、一世一代の晴れ舞台である。






サンプル終わり



12/17 東京ビッグサイト 西2ホール ひ80ab「言論弾圧」にてお待ちしています。
1/7 インテックス大阪 3号館 ぬ44bでもお待ちしております。

『警視庁のマドンナちゃんは猫かぶり<最終章 松田のプロポーズ大作戦>』
 松田陣平 × ネームレス女主人公
(A5 / 134p(表紙含む) / R18)

▽イベント頒布価格:900円
 購入いただくとノベルティでポストカードがつきます。やったね。

▽内容
『警視庁のマドンナちゃんは猫被り 最終章』
→サイト掲載の最終章本編18~20話加筆修正(約4.5万文字)
 +書き下ろし(約4.5万文字)収録

▼通販ページ:BOOTH
 今は在庫ナシです。
 12/17(日)の19時くらいに在庫ドカッといれます。
 ※通販価格は手数料などの関係でイベント頒布価格よりも少し値上がりします。ご了承ください。



【もう一個新しいもの頒布します】

 今まで出させていただいたマドンナちゃんシリーズの本

 ・警察学校のマドンナちゃんは猫かぶり
 ・警察学校のマドンナちゃんは猫かぶり【番外編詰め合わせ】
 ・警視庁のマドンナちゃんは猫かぶり【第一章】
 ・警視庁のマドンナちゃんは猫かぶり【第二章 黒の組織殲滅編】
 ・警視庁のマドンナちゃんは猫かぶり【最終章】(これが今回の新刊ね)

 計五冊を一つに収納できるブックケースを作りました。(A5サイズ / 背幅40ミリ)

▽イベント頒布価格:700円
(※購入いただくとノベルティでマドンナ協会の会員証カードがもらえます)

▼通販ページ:BOOTH
 今は在庫ナシです。
 12/17(日)の19時くらいに在庫ドカッといれます。
 ※通販価格は手数料などの関係でイベント頒布価格よりも少し値上がりします。ご了承ください。



【ちなみに…】
1/7のインテ大阪にも出ます。
ノリで申し込んでました。

通販の方が早いですが、インテ用に在庫は確保します。

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