過去から今へ

Step.2 先輩と!

今日は快晴、明け方干してきたおふとんも家に帰る頃にはふかふかになってるはずですし予定してた町工場の取材も大成功。最高の一枚が撮れた自信がありますから『とても良い1日』となる予定だったのに


「おい、何かこいつについて知ってるようだな…答えな。この不良どもをブッ飛ばしたこいつ、この悪霊についてッ!」

「別にいいですけど…後日に回していただけません?写真屋が閉まっちゃいます。あと腕、痛いので離してくださいよぉ…」


本当について無い。思わずため息もでるってもんですよ。ちょっと近道しようとしただけなのにあの空条先輩捕まるなんて何しちゃったんですかねホント。でもですよ?私は善良なる一市民なわけで目の前で殺人が起きそうだったら止めるでしょう普通。先輩本人にもスタンドが制御できてないみたいですし


「……ってさっきから聞いてんのか。」

「ええまぁ、『悪霊』について空条先輩が知りたいのはよーくわかりましたのでとりあえず写真屋で現像しに行った後にしてくださいね。このままだと〆切的に大ピンチです。」

「現像なんていつでもできるだろう。いきなり出てきて暴れまわったんだ。悪霊に取り憑かれたままじゃあ危なくて家にも戻れねぇ。頼む」

先ほどと違いじっと私の目を見て空条先輩は頼んできました。惚れ惚れするほど綺麗なお顔ですね。青みがかった深い緑が私を刺して痛いほど。
私とて公暁高校の生徒です、彼について知らない訳無いでしょう。天下無敵で才色兼備、ここらで名の知らない者はいない『公暁のJOJO』
彼に頭を下げさせて断る勇気なんてありませんよ。


「…せめて場所ぐらい変えましょうよ。ぶっ倒れたチンピラの上で談笑する趣味はないです。」


か弱くひ弱な一女生徒ではこれが精一杯ですよね。まぁスタンド戦に持ち込めばワンチャンありますけど。それはそれ、これはこれ、うまくいけば写真の一枚や二枚撮らせて貰えるかもしれませんし。イケメンの写真って良い値がつくんですよねえ。

後ろから響く鎖の音とかコートが翻る度香るタバコの匂いとか重量感たっぷりの足音とか存在感に少し震えました。よく周囲の女子はあんな躊躇なく囲めるな。あいつら心がオリハルコンでできてるのでは?そんなことを考えて歩いていると近くの公園につきました。全く長い道のりです。

自販機が二つとベンチが一つ、あとは二人がけのブランコ一つのしょぼい公園。だからこそ人気もなく密談に向いている。正直こんな所をクラスメイトに見られたら噂が噂をよんで地獄ですからね。




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「…まぁ、こんな感じですね…だいたい生まれながらのスタンド使いが主なんですけど最近何かありました?うっかり死にかけるとか」


伊達に親戚にスタンド使いが多い訳ではないので正体からその分類、スタンド使いによる事件までファイリング済み…こうしてみると私もなかなか有能な情報源ですね。どっしりと大きな体をベンチに預け自販機で買ったコーラを飲みながら聞いていた空条先輩はしばらく虚空を見つめていた目を私に向け口を開きました。


「ねぇな。……精神の像っつったがてめぇのはどんなんなんだ?」

「さっき見たじゃないですか。でっかい骸骨ですよ。普段はおっきすぎるので腕しか出しませんけどね」


空が燃えている。門限も近そうなほど暗い。冷えたおふとんほど悲しい物はありませんし帰るべきですね。
空条先輩を激励しつつすっかり空になったジュースの缶をゴミ箱に投げ入れる…も外れました。悲しい。しょうがないので拾って捨てますけど惨めなものです。しょんぼりしてると後ろから美声が聞こえてきました。いいバス、いやテノールですかね?


「てめーはどうやって制御したんだ」
「そんなこと言われましても…なんとなく、としか。ならいっそ帰らなきゃあいいのでは?一部屋ぐらい貸しますけど」
「てめぇ家族は」
「いませんね」
「…無用心なやつだな。何を言ってるかわかってんのか?」

「自分を制御できない人程度に私の餓者髑髏ちゃんは負けませんよ。で、どうするんです?」


ひょいっと振り返りにんまりと笑うと空条先輩は少し苛ついたような顔をしてからそっぽを向きました。私も小さい頃は無闇矢鱈と生き物を殺していたしこのまま帰して空条先輩のご家族が死んだりしたら寝覚めが悪い。当てがないなら私が面倒を見るしかないでしょう。


「……世話になる。てめー名はなんと言うんだ」
「苗字名前ですよ空条センパイ」


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