「おはよう承太郎。気分はどうだ?」

「…ぁ、でぃ、お……?」


眩しい。
いったいどれほど気絶していたのか、血糖値の低くなった体がだるい。鈍痛が頭に響く。甘いDIOの声にそっと承太郎は頭を持ち上げた。DIOが洗ってくれたのか不快感も、何かを着ているという感覚もない。布越しにDIOの体温を感じる。あの窒息しそうなほどの孤独から抜け出した現実にホッとする。どうやら椅子に座るDIOにもたれかかる様に床で寝ているらしい。

ぐるりと見渡すとどうやらリビングにいるらしい。3日の間撒き散らされた汚物は掃除され清潔になっている。承太郎は全裸でそこにいた。

認識したとたんに羞恥が駆け抜ける。承太郎は処女だ。未成年である、というだけでDIOが抱く事は無く、家族ぐらいにしか肌を見せた事が無い。それなのに初めてがこんな形で大事な何かを一つ踏みにじられた気がした。思わず腕で胸を抱き、体を丸め、頬がカッと熱くなるまま叫ぶ。


「、っDIO、おれの服は、」

「捨てた。あんなクソ塗れの服でわたしの家を汚す気か?言っておくが、まともに用もたせん畜生に着せる服なぞ無い。まさかイチイチこのDIOにシモの面倒まで見させる気か、ン?」

「っちが、…この手さえ使えれば」

「男と組む様な悪い腕が何をできる。起きたならさっさと動け、部屋を移す」


そう言うとしなだれ掛かる承太郎を顧みず立ち上がった。その衝撃で後ろによろめく。振り返る事なく進むDIOの背中。なぜか急に心許なくなって追おうと立ち上がった。瞬間、ギロリとDIOが肩越しに睨みつける。


「立つんじゃあないッ、……休みの間二足歩行を禁ずる。自分の言った事すら守れんマヌケはいらん」

「…ぅ、わ、わかった」


一喝、厳しく叱り飛ばすDIOの気迫に思わず頷く。
自分の言った事、罰をねだった事だろうか。あれはDIOの誘導に乗せられた様なものじゃあないか。ぐるぐると腹の中で反論する。しかしそれが口に出る事はついぞ無く、承太郎に目もくれずDIOを追うためそっと両手を地につけた。

ぐらり、体がかたむく。
球状の拘束具は手を使わせないだけでなく体重を支えることすらさせない。不安定だ。仕方なく肘までつけると上半身に対して腰が上がり交尾を待つ雌犬の様だ。ただでさえ全裸で恥ずかしいのに自分からこんな姿勢をして痴女のようじゃないか。身を起こし別の体勢を探そうとする承太郎に声が聞こえた。


「なんだその姿勢は、はしたない。…いや、不貞を働く淫乱にちょうどいいか。そのままいろ。わたしがいいというまでその姿勢で生活するんだ」

「…分かった」

「よろしい」


一向に来ない承太郎を不審に思ったのかDIOが立ち止まり承太郎を見下ろしていた。また一つ制約ができる。こんなことしたくない。人の尊厳の欠片もない。それでもたった一カ月、それだけ耐えれば優しいDIOが帰ってくると思うと承太郎はやるしかなかった。

そもそも今回の非はすべて承太郎にある。二つ心を出さなければDIOに非道をさせることも自分がこんな目にあうこともなかったのだ。一カ月でDIOのいう『いい子』になろう、と凛々しささえ感じる顔で承太郎は決意した。






「ここがこれからの居住区だ。わたしの許可無くでたりこの部屋の中で言いつけに背くことはするなよ。…まぁこの生活をずっと続けたいなら別だがなァ」

「これ、は………おれの家具はどうしたんだ」

「処分したぞ。畜生に与えたところで汚すのが関の山だろうが」


廊下に出て辿りついたのは承太郎の部屋だ。
しかしそこは様変わりしていた。ベットやカーペットが消え、床にはブルーシート、大型犬でも飼うかのような柵が部屋を二分している。一方にはソファーが柵の方を向き、もう一方にはペットシーツや砂のようなものが入った衣装ケースがある。DIOの言葉、承太郎の部屋、畜生、どれをとっても嫌な予感しかしない。


「一度しか説明せん、よく聞け。この柵の右手が今日からお前が過ごす場所だ。用はわたしに許可をとった後衣装ケースの中でしろ。シリカゲル製の猫砂を詰めてある。終わったらペットシーツで拭け。砂は3日、シーツは日に1度変えてやる。飯と水はその時教えてやろう」

「…ここで、しろ、ってか」

「ン?その手でできるのか?わたしは忙しいんだ。いちいち便所までついて行ってやる義理は無い。分かったらさっさと檻に入れ」


淡々とDIOは説明する。
つまるところ承太郎はこの部屋にいる限りDIOに逆らう事は許されず、排泄もDIOの前で許可を得てし、終わったらペットシーツに腰を振って汚物をぬぐえ、という事らしい。

徹底的に人間扱いされていない。このままこいつに付き合って大丈夫なのか。思わずさっきの決意が揺らいだ。ペタンと座り込みDIOを見上げる。床から見る姿は強大で雄々しく支配者然としていた。不安げな承太郎にDIOは片眉を上げて『入らんのか?』と言う目線を送る。痛いほど刺さる視線がうなじを焦がす。視線に操られるような奇妙な感覚が承太郎を突き動かした。

DIOから離れ一歩、また一歩と柵に近づく。
こうして見ると意外なほど大きい。丁度承太郎が立って腰か腹まであるぐらいだろうか。DIOの視線に操られるように承太郎は開いた檻の向こう側に踏み入った。壁まで行って後ろを、DIOを振り返る。鍵をかけた後満足気にソファーに腰掛け承太郎を眺める姿に承太郎は心のどこかで安心していた。間違えなかった。DIOの求めている通りにできた。今するべきは恋人の横暴を諌めるのでなくひたすらDIOに追従することなのだ、とその暖かい眼差しに確信してしまった。


「よくやったな承太郎。また一歩『いい子』に近いたぞ。これからもがんばれよ」

「ン…あぁ。わかった」

「わたしも基本的にここにいてやる。何かあったら言え」


比較的柔らかく語りかける。
檻の中で四つん這いに這う承太郎とソファーで優美に読書を始めたDIO。ここに人間と畜生の明確な境ができていた。承太郎はトイレとごわごわした毛布以外何も無い。手持ち無沙汰で無機質な檻からひたすら美しい恋人の姿を見ていた。あんなにも焦がれたDIOがすぐそこに居るのに柵に邪魔され触れられない。そもそも触れる手が無い。できる事はじっと網膜に焼き付けDIOのくれた毛布にくるまる事だけだ。

どれもこれも承太郎が悪い。承太郎が苦しんでいるのは自業自得だ。それを許せる様に仕置きと言って傍にいてくれるDIOは優しいのだ。自身のプライドを砕いた男に屈服する理由を承太郎は愛だと言い聞かせる。あんなに優しい恋人が豹変する様な事をしたんだ。従うのは当然だと。

見限られる不安。孤独と無力への絶望。その後手にした崩れ落ちるほどの安寧。平穏に生きてきた子供に強烈に叩き込まれたそれは『恐怖』となって承太郎を縛りあげる。高い矜持が認識を歪めた。恐ろしいから従うので無く愛しているから償うのだと誤認させる。承太郎本人にすら気取られる事ないこの事実をDIOは心底愉快に思っていた。





くるるるるるるる

「…DIO、腹が減ったんだ」

「そうか、食事は手ずからわたしがくれてやる。ルールさえ守れば、な。ともあれ一旦出てこい。今持ってきてやる」


腹の虫が鳴く
比べ物にならないほど無様で卑猥な姿であるのに羞恥がぬぐえないらしい。承太郎は薄っすら頬を赤らめて座ったまま呟く。それに対し南京錠を開けた後DIOは部屋を出て行った。類を出なく引き戸な部屋で承太郎がソファー前の床で座っていた。


「あぁ、そうだ。食事にもルールを設けるぞ。守れないならメシは抜きだ。もちろん水もな」

「…おれは何をすればいいんだ」


さっきよりもずっと不安げに呟く。
ルールとやらで尊厳を散々奪われた承太郎はこれ以上があるのか、と迷子の子供のような目でDIOを見た。DIOの顔色を伺い言われずとも座った床の上、DIOの足元に尻をついた承太郎に笑いが込み上げる。その上機嫌そうな様子にホッとした様に承太郎はDIOに擦り寄り甘えた。どっちにせよ承太郎に拒否権はない。ならばせいぜい甘受しDIOに愛されるいい子を目指すだけだ。

DIOは膝に頭を乗せ足元に侍る承太郎に細いホースと何を測るのか計測器付きのグルーガンの様なものをつきつける。


「これ、は…?」

「ニップルポンプ、と言う。まぁ一般的には乳首を吸い引き伸ばしたり立たせたままリングを通すために使う淫具だな」

「…つけろってか」

「あぁ、こいつをつけて吸引している間だけ食事をくれてやる。つけるのはわたしがしてやるがポンプは自分で押せ。足で固定すればその手でもそれくらいはできるはずだ。できないならメシは無しだ」


生まれて初めて見る大人の玩具に赤面する。
それにそんなもので弄ばれながらでしか食事をさせない、だと?正気の沙汰じゃない。ましてや自分で押せ自分を追い込む。つまり恋人の前で自慰をしろというのか。ざぁっと血の気が下がった。食事にもしていなかったせいで気持ち悪い。鏡を見なくても真っ白な顔色になっているのがわかる。懇願する様な眼差しでDIOを見上げる。


「でぃ、DIO…やらなきゃ駄目、か……?」

「嫌なら自分のクソでも食ってるんだな。貴様ほどの淫乱がそこらですぐ男を誑かさないように発散させてやろうと思ったが…反省などしていないらしい」

「淫乱じゃっ、ぅグッ……」


子犬のように哀れを誘う濡れた眼差し。
それを意に介さずDIOは切って捨てた。慈悲など一切含まない非情な目。淡々と告げ承太郎に用意していたらしいサンドイッチの乗った皿を持って出て行く。通りすがりに縋り付く承太郎を蹴り捨ててドアへ向かう。出て行ってしまえばもう承太郎には追い縋る事もできやしない。空腹、承太郎にはどうしようもない渇きと見捨てられる恐怖が情け無い声を承太郎に吐かせた。


「まっ、DIOッ、待って、まってくれッツ!」

「いらんのだろう?いい子になる気もないならわたしが世話をする事も、このメシも無駄だ」

「…する、から」

「ン?」

「…それやる、から。だからここ、で食わせてくれ……」

「『誰』が『何』をするんだ?その口で言ってみろ」


なんて酷い
この後に及んでうら若き乙女に生きるためとはいえ「自慰をしたいです」と言わせる気らしい。やると決めたが腰がひける。パクパクと言葉にならない声が抜ける。承太郎はぎゅっと唇を噛み締め見上げた。冷たい、氷のような瞳がじっと見つめている。意味のないうめきが漏れる。何か不思議な力でも持っているのかDIOに見つめられると現実味が薄れ自分ではない様に感じる。


「…おれ、が……」

「『おれ』?」

「っぁ、う…じょ、承太郎が、その、ポンプで吸って、……ッち、乳首をっ大きくする、から、ごはんくださいっ」

「及第点、だな。それに大きくするのは乳首じゃあない。コッチだ」

「ひぎゅっ、ぁ、ぁあッツ?!」


恥を忍び声を震わせねだる。
えづく喉を抑え必死に言葉を吐き散らす。勝手にどもってしまう口を動かす。DIOはそうして述べた口上をあっさりと流した。それだけか、と気が削がれた承太郎の隙をついて股座にチューブを差し入れた。ぐにゅりと透明なチューブにクリトリスを差し入れる。ローションが内部に塗ってあったのか包皮を剥ぎピッタリと張り付いた。あまりの暴挙に硬直した承太郎をいい事にホースの先をチューブに見えるシリンダーと結合させた。


「このままポンプの引き手を押せ。加圧メーターである値を切ったらわたしが代わりに強ォく押してやろう。わかったか?」

「、ぅ……わ、わかった。値っていくつなんだ?」

「言うわけなかろう。いくつを切ったら交代か、わからん方がスリルがあるだろう?さっさと始めろ。メーターが回っている間は食わせてやる」

「ぅ、ンっ…ふっぁあッ! ひっ、く、ぁ……」


問答無用に促されポンプを押し始めた。
足裏で固定するためにあぐらを崩した様な姿勢で股を開かざるを得ない。手元を見ないと革で滑り押すことができないので吸われ勃起していくクリが嫌でも目に入る。見ているだけで赤面する様な光景。それを自ら作り出さなければならない承太郎は泣きそうだった。一押しする度に加圧メーターの針が動く。ちゅうちゅうと吸われるような初めての性感。卑猥に変わる自分の体。一体いくつになるとDIOの手が入るのかと言う恐怖。それらが承太郎の精神を追い詰めていった。

DIOの手に怯え強く押せば今まで味わった事のない快感が体を、羞恥に身をよじれば拘束具が滑る。必死で自分を責め立てながら承太郎は果てに近づいていった。

あとほんの少し、一押しで達する。
達してしまう瞬間



「よし、もういい」

「っふ、…………ぁ、ああぁ……」


DIOの制止がかかった。
表面張力に揺れるコップの水のように張り詰めた快感はなかなか引いてくれない。真っ赤に充血した陰核はシリンダーの中でいきり立っている。はしたなく淫らにイッてしまいたかったのか、それとも恋人に醜態を晒さずに済んだのか承太郎にもわからない。唯いまだに煮立った体でDIOの命令を待ち受ける。熱に融けた目で人外染みた美貌を仰ぐ


「どうした?腹が減っているんだろう。口を開けろ」

「へ、?」

「へ?じゃあない。さっさとしろ。パンが乾く」

「ぁ、あぁ。わかった」


いかがわしい事など何も無かったようにDIOは給餌を始めた。足元に跪く承太郎の口に一口代のサンドイッチを放り込む。目を白黒させるも従順に、餌を待つ小鳥の様に大口を開けて待つ。吸引は終わったが真空に保たれたままのシリンダーが時折揺れ、波状に快感を送り込む。服も乱さず悠然と座るDIOと全裸で淫具をつけたまま食べさせられる承太郎。淫猥な体と健全な食事。正常と非常が一室で入り混じり混乱する。


「ン〜よくできたじゃあないか。これもしっかり吸着しているな。褒美に水を後で持ってきてやろう」

「、ぁうッツ! でぃ、お、そこ、蹴らないでくれ」


愉快そうに笑ってDIOは承太郎の股間を踏む。
ぐるぐると巡る快感が破裂寸前まで再び持ち上がる。衝撃を逃がそうと丸まる承太郎の髪を丁寧な手つきで梳き足に縋る承太郎を抱き寄せた。

その手つきがこれは正しい事だ、と承太郎に刷り込んでいく。快感に悶える姿に愉悦が湧く。DIOは笑い声を抑えるのに一苦労だった。一度乗り越えてしまえばあとは慣れるだけ。少しずつ快楽を生活に溶け込ませ非日常と日常が地続きになってしまえばいい。残り3週間あまり、晩夏の頃が楽しみだ。

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