「くーじょーさん!あっちに大きな鳥さんが!!」
「やかましい。もうちっと声の音量下げろ」
「はい!」


今日も彼女は承太郎に絡みにいってる。僕の幼馴染はどうやら本気らしい。正直このまま僕が引き取る事になるかと思ってたんだけどなぁ

「のりくん置いてくよ?」「今行く」



彼女を一番理解しているのは僕で僕を理解しているのも彼女だ。家族以上恋人未満の仲は伊達じゃない。

「寝込み、襲うなよ」「……はーい」

肉食獣の様な視線は承太郎に刺さったままだ。
(頼むから承太郎を泣かす様な事はやめてくれ)
僕は彼女の幼馴染で承太郎の友人なんだから


「ふ、うふふやっぱり運命だよ」
「何がだい?」
「わかってるくせに」
「…葬式には参加したくないな」
「何のこと?」
「わかってるだろ」


吊り橋効果かあんなのがタイプだったのか承太郎も満更じゃあないらしい。腕に抱きつかれても解かなくなった。二人でいると空気が柔らかい。なるほどこれが友達以上恋人未満か。そろそろ喪服の準備をするべきかな



「、のりくん!!」

彼女の絶叫がカイロに響く。次の瞬間遠くいたはずの彼女が、宙、に落ち、て

え?

飛び散る赤。鉄の匂い。美しい化け物が口角を上げる。承太郎が無言で怒りを燻らせる。

落ちる彼女は笑っていた。


「生きてるうちは永遠になれないのよ」
「だから幸せな瞬間に死んでしまいたい。」
「そうね、できたら恋してる時。それも両片思いなら最高ね。」
「死んだ瞬間私は愛しい人の中で一番になれる。死人に生者は勝てないもの」
だからね、のりあき。私恋したら叶う前に死ぬ気よ


「君も下手うったね。」
「まったくよ。絶対死んだと思ったのに」
「これで懲りてくれると僕も安心なんだけどね」
「まさか、今度こそ成功してみせる」
そう言う彼女を横目に花京院は席を立った。
「のりくん、承太郎はまだ?」
承太郎を追えない彼女の足には銀の鎖が揺れた


彼女が歪んだ責任は僕にある。あの彼女の両親が天井に下がった日。スタンドで必死に時間を巻き戻そうとする彼女に僕は二人の愛は永遠になったんだと声をかけた。それがマズかったんだろう。死に後れた悲しみと化学反応を起こしたらしい。一晩寝た後彼女は死を望む様になった


様々な原因が重なった。彼女のスタンドも悪かった。対象の時間を戻す。うっかり割ったお皿も怪我も元どおり、しかし彼女が本当に戻したかった両親の魂は取り戻せなかった。万能にすら感じる能力の不可能。不可逆の変化。愛も時代も変わる中の絶対、死こそ永遠なのだ


そう確信した彼女が望むことなどただ一つだろう。美しく幸せな時を永遠に。正直こんな身勝手に巻き込まれた君には同情しかない。
「だけど僕はかわいい幼馴染に死んで欲しくないんだ。任せたよ承太郎」
「もちろんだ。死んでも手放す気はねぇ。おれを選んだあいつが悪い」


不敵に笑った承太郎を見て僕は安心した。本人の意思はどうあれ一件落着だ。承太郎はもう彼女を逃さないだろう。死神にすら譲りはしまい。そして彼女も愛されながら死ぬために承太郎から離れられない。承太郎と共にいる限り死なせて貰えない。歪ではあるがハッピーエンドだ


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