先生達が大慌てで校内を走り回る。煩いと感じながら切原は顔をあげた。
今は数学の授業だ。彼にとって呪文でしかないこの時間は睡眠タイムになっていた。その時間を潰され切原はイライラする。ガラガラと扉が開き教師が入ってくる。教師は数学の担当者を呼び耳打ちをした。数学の教師は顔を青くして、今日は自習だといって出ていった。よし、これで寝れる。また机に顔を伏せると不良で有名な佐々木を筆頭に男達が自分の周りに集まってくるのがわかった。

「なあ切原」

「・・・んだよ、うっせえな」

「真田マネージャーっていくら払ったらやらせてくれんの?」

その言葉を聞くなり、近くにいた香川が佐々木を殴った。あまりの速さに、俺は目を見開いた。佐々木は香川を見てなにしやがんだと叫んだ。香川はただ一言キモイと呟いた。

「は?」

「きもいんだけど。すぐそういうこと言うの。すっごいキモい。」

「んだとコラ・・・」

「そうやってヤることしか考えてないから、毎日授業中寝てる切原にも成績で負けるんだよ」

香川と佐々木達がにらみ合う。周りが喧嘩だと騒ぎ始め、他クラスからも生徒が集まってきた。委員長がやめなさいと叫んでるがヒートアップした喧嘩は誰も止められない。佐々木が初めに香川の胸ぐらを掴んで投げ飛ばした。香川が机にぶつかり転げる。女子の悲鳴と男子の歓声が響き俺のクラスはとても騒がしくなってきた。
佐々木たちは香川を蹴るだけ蹴って満足したように腕をまるでチャンピオンがかったかのように上げた。

「俺に逆らうんじゃねえよクソアマが」

ニタニタと笑う佐々木を見ていられなくて俺は立ち上がる。声を出そうとした瞬間、佐々木の姿がなくなった。

「あ!?」

「そのままそっくり返してやるよ。その言葉」

鈍い音が何回か続く。反応に遅れてた佐々木が狂ったよに叫び声を上げた。香川が頭から血を流しながら佐々木を殴っていた。クラス中が香川を止めに入る。わあわあともっと騒がしくなるクラス。前を見ると香川と目があった。その目が、俺に何か言っていた気がした。

「一体何をしてるんだ!!!」

怒号にびびたのは俺だけじゃないと思う。
声の聞こえた方を見るとロングヘアーの女、この学校の生徒会長が俺たちを睨んでた。何処か遠くで、チャイムの音がなった気がした。






「香川、ありがとう」

保健室のベットに座りながら切原の言葉に、香川は先ほど治療してもらった額の傷を抑えながら振り向いた。

「急に何」

「いや、さっき助けてくれたじゃんか」

「別に助けたつもりないんだけど。自意識過剰うざ」

香川の冷たい目が切原に突き刺さる。てか、お礼言えたんだね。すごいすごいと馬鹿にしてくる香川にイラッとするが耐えた。以前自分の先輩にも言ったように、切原は香川が苦手だ。見た目とか、性格とかが嫌いなわけじゃない。怖いのだ。何を考えているかわからないその目が、とても怖くて、全てを見透かされているような気がするのだ。

「切原くんと香川さん。6限目が終わるまで此処にいていいって」

頭を抑えながら入ってきた生徒会長、兼崎に切原はあざっすと声を出した。

「すいません、兼崎生徒会長って、真田マネージャーと仲良かったですよね」

「あ?」

「最近何してるとか、聞いてたり、連絡とったりしてますか?」

突然の言葉に兼崎は顔をしかめた。じっと見つめてくる香川に兼崎はため息を吐いて全くと声を発した。

「そうですか。突然すいません」

「いや、別にいいよ。」

兼崎は近くにあったパイプイスを引き寄せそこに座る。何度目かのため息を吐いて連絡が全く来ないんだとつぶやいた。

「え?」

「今日弦一郎の親から電話があったそうよ。一昨日から家にも帰ってないそうで、今学校全体が大慌て状態。先生たちも乱交の話知ってるからもしかしたら・・・ってことで今学校中で探してるみたい」

「先輩、メールしてるんですか?」

「メールしても返信がこないんよっ」

全く違う声、第三者の声に三人が振り向く。そこには目を真っ赤にしてカーディガンの袖で目元を抑え左頬を赤くした少女とテニス部の詐欺師、仁王が立っていた。


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