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母に力を借りて、つくりかたを一から教わり、二週間時間をついやしてついにマフラーが出来た。ショッキングピンクでもよかったがどうにも姫様にはあわない気がしたので、薄い桃色にしておいた。端に黄色のハイラルの紋章。先のほうには可愛らしくボンボンをつけておいた

完璧だろこれ。俺天才。

母からもお褒めの言葉を頂いたし、さっそくお守りという仕事も兼て姫に渡しに行こうと思いノックし部屋へと入れば、姫様がまた泣いていた。びびって扉を閉めそうになった。ついでにマフラーを落としそうになった

焦って取り乱す俺を見た姫は、前のように隠すことはなく眉を下げる。それに俺も落ち着いて姫様へと歩み寄った


「姫様?あ、ハンカチ使ってください」

「未使用ですか」

「いや俺そんなに汚いことに使ってないですよ!ていうか未使用です」

「じゃあいりません」

「どうして!?」


変だ。姫様が変。

声ははっきりと出ているものの、やはり泣いてしまっている。どうしたのかと優しく問いかければ姫様は顔を俯かせた。それから、謝罪の言葉を口にする

どうして俺が、謝らなければならないんだ

意味がわからずに姫様の頭を撫でれば、姫様がもう一度謝罪した。やめてくれ。仮にも一国の姫が、たかが平民に頭を下げるなど。

姫、姫。

そう呼ぶけれども、頭はあげてはくれなかった。最後にどうして泣いてるんですかと聞けば、姫様はゆっくりと口を開く


「花、花冠が」

「花冠?・・・・・・・随分前につくったやつですか?」

「そうです。それです。それが、それが枯れてしまっていて、それを見た家臣が、」


捨ててしまったのです。私の大切なものを、捨ててしまわれた

姫様が悲痛な声で言うものだから、俺は唖然とした。

花冠だって植物だ。そりゃあずっと摘んで放置していれば枯れてしまう。けれども姫様はそれが悲しいわけではなかったらしい。捨てられたことが、どうしても、悔しくて悲しいのだという

そんなに大事にしてくれていたのかと今更ながらに思った

ジオはどんどん悲しみのあまり息の上がっていく姫様を見て、眉間にシワを寄せる


「何も、捨てなくても良かったでしょう?でも、あなたが、ジオがはじめてわたしにくれた、その花冠はいらないと、持って行ってしまったのです。枯れてしまったものは忘れなさいといっていました。ですが、わたしは貴方にもらったもの何一つとて、わすれたくなどないのです。ガラクタだと笑われたって、大切にしていたかったのです」

「・・・・・・・・姫様」


ジオが危険を感じたのはここだ。

ジオは最初からただの姫様のお守り役で、深く関係を築いていい人間ではなかった。こうしてマフラーを編んでもらったと周りに知られればそこからたちまち悪い噂は広まり、世間的にも存在的にも自分は消されるかもしれない。姫様を抱きしめたとバレてしまえばジオは無礼者として扱われる

それは非常にまずかった

けれども、姫様のその気持ちは踏みにじるべきではないと思ったから、ジオは「ありがとうございます」と伝えて、姫様の涙を拭う


「そのお気持ちだけで俺は嬉しいですよ姫様」

「ですが!」

「姫様。枯れてしまったものを忘れるのは出来ないと駄目です。それがなんであってもですよ姫様。ただ、花冠はまた、春になれば作れるでしょう。その時が来たらまたつくることにしましょう?」


そういってつくってきたマフラーを姫様の首に巻いてやれば、姫様はそれをぎゅっと握り締めて、それから頷いた。俺はつくってきたマフラーが姫様によく似合うと思い姫様の頭を撫でた

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