04
「あぁ、今日お母さんたちいないから。帰ってくるのも遅いわよ」
「え、なんで?」
「結婚記念日だから、二人で出掛けて来るの。欲しかったお掃除ロボットも買ってもらうわよ〜!」
うふふ、と上機嫌な母親を横目に冷蔵庫を開けると、物の見事に何もない。そうか、丸一日親はいないのか。
毎年そう言えばこの日だったな、とは思うのだが、意外と記念日までは娘でも覚えないので、本当に唐突に知らせてくるな・・・・と思う。っていうか我が家は記念日当日でなくともお祝いをするし、そのせいで覚えられないっていうのもあるんだろうけど。
別に引き留める理由もないし、是非夫婦円満にこれからも過ごしてほしいので「楽しんできてね!お土産よろしく〜」とだけ言って見送っておいた。覚えてたらねと返されたのでお土産の望みは正直薄い。
朝から食べるもの、あんまりないな・・・・・
「とりあえず買い物に行こう・・・・・」
野菜もなければ肉もないし、唯一お米はあるが漬物も何もない。卵かけご飯を三食も食べたくないし、その肝心の卵も残りあと二つしかないのだ。買い物にいかなければいけないのは明らかである。
「うーん、まだ七時かあ。風魔さんもついてくる?」
「・・・・・・」
「そっか。そしたら朝ごはんは外で食べて、お昼ご飯と夜ごはんの材料を買いに行こう」
夜ごはん何にしようかな。
▽▲
「調味料は一式まだあるんだよね。どうしようか。カレーでも作る?人参とたまねぎとじゃがいも取ってきて〜」
風魔さんがひとつ頷いたのを確認して、私は肉を求めて生肉のコーナーへ。
豚肉と鶏肉、どちらにするか迷うが、さてどうしよう?どちらも買ってしまってもいいのだが・・・・・そう考えながら財布の中身を見る。まあ今回の買い物ぐらいは余裕だろう。給料日後でよかったわ
一人で黙々と並べられている肉を見ていると、後ろからグイッと買い物のカゴを引かれた。ので、大人しくカゴの取っ手部分から手を放して振り向く。
「持たせてごめん、ありがと・・・・・・ってお徳用!?安かったの?」
「・・・・・・・?」
「あぁ、それは安いね。いや、量は多めに買っておいて損はないからいいよ」
買っておけば母親が明日にでも使うし、そんなに量に関しては気にすることではない。
大量の玉ねぎと少量のじゃがいも。人参もお徳用だ。恐らく私からカゴを取り上げたのは、野菜が重いからだろう。マジもんのイケメンかよ惚れるわ。
「あとは・・・・・・っていうか結局カレーでいいの?」
風魔さんにそう訪ねながら、とりあえずスーパーを一周ぐるりとまわる。時々風魔さんが物を手にとってこちらを見るので、値段等を確認してからオーケーサインを出した。
大丈夫!給料日後の私は強い(?)!!
謎の勢いでアイスクリームまで買ってしまった。
聞いて驚け。レジに着いたころにはカゴがふたつになってたんだぜ・・・・・
「ご、ごめん本当・・・・・私こんな軽いのしか・・・・」
「・・・・・・・」
「ほんとごめん!重たいの持ってくれてありがとう」
風魔さんは気にするなとばかりに首を軽く左右にふり、私を見下ろした。
さすがに車の扉を開けてさしあげなければと思ったが、いざ扉の前まで行くと、風魔さんは何事もなかったかのように片手で全部を持ってふつうにドアを開けた。
いや、こういう人だったわ風魔さんは・・・・・
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