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わかってたの




ゼルダが空に戻ってこなくなった。スカイロフトの住民は不思議そうにするだけで地上へ行くことなどなかったが、バドが空へ帰ってきたときにゼルダの安否を聞いたところ「知らない」の一点張りだった。

校長先生はお前が知らないわけがないと一度はバドの言葉を疑った。だって、今地上にいる人間はリンクとゼルダとバドだけで、バドとリンクがゼルダの安否を知らないわけがない。その理屈は通っている。バドもリンクもゼルダの傍にずっといたからだ

たった三人が地上で暮らすのにバラバラで生活をするわけがないと、誰もがわかっているからだった

だからなおさら校長はバドの言葉が信じられなくて、度々空へと姿を見せるリンクにゼルダのことを尋ねたのに、リンクでさえもが「わからない」とそれ以降口を閉ざしてしまっている。どうして女神を守るべき勇者が女神のことを知らないのだと根本的なところから問い詰めてやりたいような言葉だったが、それも嘘ではなかった

ゼルダは突如姿を消した。散歩に行って来ると言ったっきり戻ってはこなかったそうだ。戻ってこないとなれば魔物に襲われたか、森で迷ってしまっているのか、予想はだいたいするものだけれど、リンクは別に焦る様子も見せていなければ何か探しているようでもない。

バドは少しだけ雰囲気が暗くなっていた。

どうして。リンクとゼルダはあんなにも愛し合っていた仲だというのに、なんでゼルダが居なくなってしまった今、リンクは普段どおりでいられるのだろう

きっと皆が思ったことだ。ゼルダに愛想を尽かしたと考える意地汚い女がリンクに言い寄っている間、私は地上に降りて女神像の前まで来ていた。ここならゼルダがいるような気がしてしょうがないのだ。ふとしたときに現れて、久しぶりねって綺麗な笑顔で私に微笑んでくれるような気がして

けれどいつまでたってもゼルダの声は聞こえないまま、私は静かに目を伏せた

鳥の鳴き声に混じって足音が聞こえる。

それはよく聞きなれた、リンクのブーツの音だった


「なまえ、こんなところにいたんだ」

「リンク?・・・・・・・・・ねぇ、ゼルダはまだ見つからない?」

「ごめん。探してるんだけど、どうしても見つかりそうになくて・・・・」


いかにも落胆してますといった表情をつくっているのが私にはバレバレだ。普通の人ならば彼のこの素晴らしい演技力にも性格にだって一生騙され続けることだろうが、真実を勘付いてしまっている私には、本当にわざとらしいものにしか見えなかった

本当は、わかっていた。

リンクがゼルダのことをこれっぽっちも探してなんていないことを。バドが何か口止めされていることを。ゼルダがもう、いないことを

皆は知らないのだ。リンクは本当は私を好いてくれていた。けれど私がそれでは駄目だと、ゼルダを守って生きていくべきだとリンクに言って、半ば無理矢理リンクとゼルダを私がくっつけたのである

全ては私が悪かったのだ。

リンクは悲しい顔をしながらも私の思案を受け入れてくれて、ゼルダと仲良く地上で暮らしていたはずなのに、それには我慢の限界というものが存在していた。

リンクは私を諦めてなどいなかった。ゼルダが邪魔だった。リンクが本来ならば守るべき対象である女神が、どうしても目障りで仕方がなくてお荷物でどうでもいい邪魔な存在だった

だから消した。その先にいるなまえを求めては女神の血をひたすらに浴びたのだ

神に恨まれたって殺されたっていい。なまえがこの手に収まればそれでいい

リンクは歪みが隠しきれていない口元に笑みを浮かべて、私へと手を差し伸ばした


「なんてね。気づいてるくせに知らない振りするなんて、なまえは悪い子だね」

「リンクは狂ってるね」

「原因はなまえだろ?僕は自分の意思に従ってるだけだよ」


そうね。私が最初からゼルダのことなんて考えていなければ、こんなことにはならなかったんだよね

でも許してリンク、ゼルダ。私は二人を苦しめたかったわけじゃなかったの。まさかこんなにリンクの愛が強かったなんて思わなかった。ごめんね、ごめんねゼルダ

きっと恨んでるだろうけれど、これだけは言わせて欲しい


私は、二人が幸せなら、それでよかったんだよ

そこに私はいらなかったはずなのに、私はいつの間にか二人の間に入ってしまってて、なんでこんなことになったんだか自分でもわからないや


「ゼルダはもういないから、今なら僕のこと受け入れてくれるよね」

「いいよ。ごめんね、リンク。我慢させて、ごめん」

「いいんだよ。なまえは優しいからさ、きっと僕とゼルダのことを考えてくれてたんだよね?」

「そのとおりだけど、それがこんな結果になってちゃ世話ないわ」

「僕はゼルダがいなくなって、むしろよかったと思うけどなぁ」


バドも空に帰るって言ってたし、本当に二人っきりだよ


私はぐちゃぐちゃに顔を涙で濡らして、悲痛な叫び声をあげた