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本当に好きな子の前ほど



「もっと女らしくしたらどうだ?ブス」

「朝から可愛らしいお口がよくまわりますねお坊ちゃま。次言ったら殴り潰す」


エイトが起きるまで待つことにして、とりあえず私は散歩に出かけるため、教会の出口へ向かおうとしているとすぐ近くから罵倒が飛んできた。

朝っぱらからブスだのなんだのうざいやつだ。

櫛を投げつけて来やがったので、適当に髪を梳いてからお礼と一緒に投げ返してやった。キャッチされたので舌打ちをかませば鼻で笑われる。なんだこいつ。本当にもうなんだよこいつ。


「こんな朝早くにどこに行く」

「ククールには関係ないでしょ!ていうか一人でいける場所なんてたかが知れてるわよ」

「まあそうだろうな」


何せ私自身が強いわけではないので、もし遭遇した魔物の数が多ければ絶体絶命の危機である。おまけに体力がそんなにあるわけではないから、すぐに倒されること間違いなしだろう。

だから散歩とは言っても教会の周りをぐるっと、二週ぐらいするだけだ。

一応武器を持って足を進めると、ククールも何故か着いてきた。


「なんで来るの?」

「俺も散歩だ」

「あら、ゼシカちゃんの可愛いかわいい寝顔が、今ならたーっぷり見れるっていうのに?勿体無いことするのね」

「別に今日じゃなくても見れる」

「まぁそうなんだけどね」

「嫉妬してくれたのか?」

「何馬鹿なこと言ってるんだかねぇ・・・・」


ブスブス言う割りには自然とそういった言葉が出てくるようだ。こいつは女相手なら誰でも良いのか。軽薄男め。

辺りを見渡して魔物がいないことを確認すると、のんびりと散歩を始める。朝の薄暗い感じが気分的に落ち着きを与えていた。

空気がいいねククール。そういいかけてククールに視線を向けると、ばっちりと目が合う。何こっち見てんだお前


「何、相変わらず不細工だなぁって思ってるんでしょ」

「あぁ、ゼシカとは比べ物にならない」

「ちょっとはオブラートに包むかなんかしろ!」


確かにブスに分類される顔ではあるけれどもさ!普通よりちょっと下かもしれないけどさ!冗談でもいいから視界に入れてもギリギリ大丈夫な顔だくらい、言ってほしい。いやそれを言われても傷つくのは目に見えてるんだけど。

つーかゼシカが美人すぎるだけなんだよ。お前の顔がいいから周りに可愛い子ばっか集まってきてたんだろ。それ見てたから余計に、ただの村娘である私の顔がブスに見えるんだよあーほ!ばーか!くたばれ!


「まあ、」


お前のブッサイクな顔を見てられるのは、俺くらいだろうな

そう言葉にしたククールに突っかかりを感じたが、私は気のせいだろうとククールの言葉に含まれた意味を無視した。せいぜい好きな子にでも言ってやればいいのだ、そんな台詞。


「私のぶっさいく!な顔なんか見なくても、あんたの周りには可愛い子いっぱいいるじゃん。ゼシカだっているし。他の子見てれば?」

「・・・・・・・・・・・・・」


ブスブス言われるのだって辛いのだからやめてほしい。私だって望むのなら美形に生まれたかった。でもヤンガスよりはマシだって自負してる。

くっそー自分がイケメンだからって見下しやがって!


「私は目に毒なんでしょ。なんたって不細工だものね。性格も、何もかもゼシカとは違う。女の子らしくもない。ククールにとったら嫌気がさすような女だね!私だってお前みたいな、ナルシストで女の子に正面きってブスばっかり言うようなやつには嫌気がさすよ」


ちょっと言いすぎかとも思ったが、ククールのやつはこれくらいいわないと分かってくれないだろう。

そう思い言い切って、ククールの顔を再度みたらなんのその。平然としているかと思いきや固まっていた。そんなにショックだったのか。


「ククール?」

「・・・・・・・・・・違う、」

「何が。っていうかエイトたち、もうすぐおきるよ。戻ろう?」

「・・・・・・・・・なんで上手く言えないんだろうな」

「知らないよ」


何が上手く言えないのかはわからないけれど、少なくとも私にこれだけ言われたことがショックだったのならば、これから一言くらい可愛いとか言ってくれてもいいんじゃないの。