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ハンカチもあっと言う間に血を吸い込んでしまって、ポタポタと血は床に落ちていった。それに気づいたリンクが偶々持っていたタオルで押さえてくれる
救護室に行けばそこにはラナがいた。ラナは私とリンクを見て驚いたように目を見開くと、すぐさま手当ての準備を始める。その手際はとてもよかったがどこか複雑そうな面持ちでもあった
「そこに座って、この台に両腕を乗せて!」
「ラナ、いつもの医者はどこにいる?」
「今日は休みなの。だからいないんだよ。手当てくらいなら私は出来るから・・・・さすがに傷口が開いてて縫うことになれば他の人を呼ぶしかないけれど・・・・・・一体何があったの?」
痛いけど我慢してね、とラナが言う。それを合図に腕の下に布を敷いてすぐさま傷全体に水がぶっかけられた。傷の周りの血を拭いながらまだ出血する場所を押さえる
痛みに耐えるので精一杯な私の代わりに、リンクが説明することに
「食堂で喧嘩がはじまって、それで誰かが投げた食器がメイナにあたったんだ」
「食器は割れたのね?」
傷口を見てみるが破片はこれといって傷に入っていないようで、運がよかった、とラナは言葉を零した
見れば三箇所ぱっくりと開いてしまっている傷があり、これは縫わないといけないと言われてしまって、結局誰か医師を呼ばなければいけなくなってしまった。縫うといわれたときの私の顔はそりゃあもう酷いもんだっただろう。水をかけるだけでもこれだけ痛いのに、これからまだ消毒もあるのに、さらに縫うだなんて。地獄だ。死にたい。
今すぐ救護室から逃げ出したいのをぐっと堪えて涙を流していると、リンクが救護室を出て行った
「あ、あれ?リンク?」
「きっと食堂に行ったんだね。喧嘩を止めないとまたメイナみたいに怪我する人が出てくるかもしれないから」
「そっか・・・・・・」
出来れば傍に居てほしかったのだけれど。私が逃げ出さないように見張るとかしてほしかった。マジで逃げたい。リンクがいないこの瞬間に甘えて、ものすごく逃げ出したい気分だ。それじゃあ駄目だってわかってるけど体が動こうとするんだよ、ちょっと誰か私を殴って気絶でもさせて!痛いの嫌だ!やだあああ
「おぉ、リン、」
男は黙った。
呼びかけた名前は途中で途切れ、冷や汗がたらりと背中を伝うのがわかる。食堂を出て行って帰って来たと思ったらリンクはマジギレしていた
冷たい表情をしているリンクはそのまま男を無視し、ずかずかと食堂へと入ると、近くにあった椅子を持ち上げて喧嘩している二人の間にぶん投げた。それも勢いよく、椅子が大破してしまうくらいには強く、投げつけた
誰もが黙り込み、即座にリンクへと視線を送る
異様な空気が食堂を包んだ。喧嘩も止まって、男たちは今にも小さく悲鳴をあげそうな顔で一歩後ずさる。唯一この部屋で動いているのは怒っている当の本人であるリンクと、忙しそうに包丁を働かせているシェフだけ
「な、なんだ、リンク・・・・・?」
「おい、椅子壊れてんぞ・・・・」
リンクに喋りかけるも虚しくリンクは二人の近くまで歩みをすすめ、そして、
二人の頭を鷲掴むと、そのままこれまた強くテーブルに男たちの頭を打ち付けた
「ぐあッ!!」
一人は声をあげ、一人は言葉を出すこともなく気絶。
何も聞こえない、包丁のトントンというリズムのいい音が部屋に響く中、そこでやっと、リンクは声を出した
「仲直り、出来るだろ?」
いや無理だろ、気絶してるぞ。そんな周りの気持ちは生憎とリンクには届かなかった
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