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不可思議な出来事である痛い思いというのがこれまた軽いものから重いものまで様々である。

とはいっても転んでかすり傷程度から、階段から落ちて打撲するなんていうものではあるのだが。

リンクに会ってない間は私は怪我しなくてよかった。つまりリンクがなんか悪運かなんかを私のもとへつれてきているんではなかろうか

そう考えたが何の根拠もない上にリンクに申し訳ないので(いやむしろこれは言うべきか)静かにそんな思いには蓋をした。無心になるのよメイナ。確かにリンクは鬱陶しいし苦手なやつだけど悪い男じゃあないのよ。リンクのせいじゃないきっとそう

昨日打撲してしまった足に湿布を貼って、今日は中庭の掃除なので箒で枯葉を掃いていく。そこへリンクがやってきた。うげっと顔を顰めた私など気にもとめずにリンクは抱きついてくる


「おはようメイナ」

「朝の抱擁ですか。元気だね。邪魔」

「少しぐらい構って」

「嫌」


いつになったらこのリンクの構ってちゃんは直るのだろうか。それだけが人生の悩みだ。他にも悩みはたくさんあるが、ダントツで大きな悩みベスト3の中にはランクインするぐらいリンクのこれには困っている

というのも、リンクはどうしてかよく私に纏わりついてくるのだ。嫌われてるわけではないことはよくわかるのだが、しかし毎日こんなことをされていては仕事に支障が出るのも事実。鬱陶しいのも事実。切実に、リンクには私に近づいてほしくないのである。リンクが嫌いなんじゃなくて苦手なだけで悪い意味を込めて言ってるわけじゃないんだよ本当

そりゃあ世の女性方はこんな美形に抱きしめられたりなんてしたら顔を真っ赤にして発狂するだろうさ。おまけに頬ずりなんてされた日には嬉しすぎて爆発するかもしれない。でも私は小さい頃からリンクを見ていたし、リンクと遊んだりもしていたし、チャンバラごっこだってしていた仲だし、リンクをおままごとに無理矢理参加させていた仲でだってあるし、もうこの顔は見慣れたも見飽きたも同然だった

しかも慣れている上に苦手な男だ。嬉しいわけがない。仕事だってちゃんとしなければ給料が下がる。勘弁してくれ。私は今度自分の私服を買いにいかなきゃいけないんだからお金は必要なんだ。もうなんで服って破けるかなぁ・・・・・


「なんで?」

「仕事中だから。リンクだって訓練兵でしょ大人しく訓練してきなさいよ」

「俺もう勇者だし」

「だったら勇者がこんなところでだらだらしない!訓練してこいこの、やろう!!」


綺麗な金髪を引っつかんで引っ張る。自分からこいつを引き剥がすようにしてすれば、リンクは痛みに顔を顰めて大人しく離れていった。こうでもしないとリンクは言うことを聞かないのである

もう口も利かないという態度を取ろうとしたまさにその瞬間、


「うわっ、」


いきなり強風が吹いた

咄嗟に目を瞑った私は、次に来た頭への衝撃に思わずしゃがみこんで苦しむこととなる


ガツン!!

「いだあっ!?」

「メイナ!?」


なんということだ。風に乗って鉄パイプが飛んできやがった。頭に。

痛む頭を押さえて眉根をよせると、追い討ちをかけるように手を放した箒がわたしにぶつかる。遠くから業者の人間であろう男の人の声が聞こえて、私は地面に落ちてすっかり大人しくなったパイプをうらめしそうに睨みつけた

攻撃するだけして涼しい顔しやがってこいつ!

鉄パイプに何言ってるんだって思うだろう。だが考えてほしい。いくら強風とはいえ今の風で鉄が飛んでくるはずがないのだ。つまりこれは不自然で、不可解な出来事なのである。おまけにリンクに被害はまったくといっていいほどない

何、何これ。神様の悪戯なの?悪戯っていうか、いじめ?

リンクが私の頭を見て、傷が出来ていないことを確認すると安心したように息を吐いた。それから私を抱きしめて頭を撫でる。安心する行為ではあるが、ここは外でましてや部屋ではなく城の庭なのでやめてほしいと思った。けれどもリンクの優しさをむげには出来ず、私は大人しくリンクを無視して痛みと格闘することに専念した




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