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「え?」
ラナは唖然として、開いた口を閉じることも出来なかった。
メイド長だという少々シワの目立つおばあさんから心配するように尋ねかけられたのは、他でもない部下であるメイナのことだった。既に三週間が過ぎているのに連絡もなく、親族である人達もメイナがいまどこにいて何をしているのか、全くわかっていない状況だ。あなたは知らないのか、と
知るわけがなかった。だって既に、ラナからしてみれば、ヤクシャと会ったとき以来ずっと見ていないのだ。おおよそ一ヶ月ちょっとは経過してしまっているだろう。あのメイナが無断で仕事をサボるとも思えない
しかもサボるのにも限度がある
おかしい、と感じたラナがまず最初に尋ねたのが、リンクだった。リンクはメイナを見つけるのが異常なくらい上手くて、メイナを探しているときは必ずリンクのもとへ行けば見つけてくれることが多かった
今回も見つかるんじゃないか、でも三週間も連絡がとれていないのならば、リンクだってそのことは知っているはず・・・・
もやもや考えていても仕方がないので、随分と見慣れてしまった緑の背に声をかけた。青いマフラーをふわりとなびかせて、リンクが振り返る
「?」
「大変なの。リンク・・・・・最近、メイナを見かけてない?もうずっと連絡もとれなくて、メイナの家族も誰も知らないっていうの!」
嫌いは嫌いでもいい人だったことは知っている。行方不明になってしまっているのならば探したほうがいい。もしかしたら、事件にでもなっているのかもしれない
慌てるラナなんて横目に、リンクは頭を抱えたあとちゃんとラナを見た。その様子はとても、落ち着いていて、とてもじゃないがメイナ一筋のリンクが、メイナの行方も安否も分からない状態でとるような態度ではなかった。ラナはこれまたおかしいと眉根を寄せる
「そうなんだ」
しかも返ってきた言葉がたったの一言と来た。そうなんだ、という返答をしたということは、少なからずもメイナが行方不明扱いになっていることはしらなかったのだろう。リンクならばすぐにでも耳にしていそうな情報なのに、この前までのリンクなら、慌てて城の中といわず街も、平原でさえも走り回っただろうに
リンクは穏やかに笑っていて、ラナは何もいえなかった。予想外のリンクの反応に、少々思考が停止してしまっていた
「メイナなら大丈夫」
「何、何を根拠にいってるの・・・・?リンク」
「俺が守ってるから、」
今は安心して眠ってる。
ラナは急いでリンクの元から離れた。目指したのはリンクの部屋で、勘ではあったけれど、ここに何かあるような気がした。よくよく部屋の中を探っていれば気配だってする
前一度来たときに、ちゃんと確かめるべきだった
鍵がガチャガチャと音を立てる。守るとまで言っているのだからそう簡単に開くようなものではなかった
魔道書を手に鍵を壊す。頑丈なものではあったが、ラナの魔法で壊れないことはなかった
「メイナ・・・・・!」
部屋は思ったよりも明るく、日の光が窓から差し込んでいて丁度いいくらいだ。けれどもそんなことも気にならないくらいに衝撃を受けたのが、部屋の隅においてある大きな檻だった。ラナはそれに近づく。お世辞にも勇み足なんてものではない
「メイナ・・・・・?」
確かに安心しきったように、眠っている。目の下には隈もない。
死んでいるのでは、とも思ったが、息はちゃんとしているようだ
だったらなんでこんなところに、
(もしかして私のせい?私が、リンクに、ヤクシャさんのところにいるって教えちゃったから!?)
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