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背後から襲い掛かってきた久しい感覚に、メイナは情けなくも小さく悲鳴をあげながら硬直した


「久しぶり、メイナ」


硬直して、そして今動いたら確実に危ないとメイナはそのまま体を固まらせて、背後にいる人物すら見ることもできずに焦った。そりゃあもう焦って焦って次は何が起こるんだと想像する

この前みたいに鉄パイプが飛んでくるのか、何もないところで転んで骨折でもするのか、何かがこちらに突っ込んできて撥ねられるのか。もはや城の中だろうと外だろうと予想外の出来事が起こるのは当たり前だった。もしかしたら鉄パイプじゃなくて今度は剣か斧かそこらへんが頭めがけて飛んでくるのかもしれない

気配を上手く殺してやってきたリンクに、メイナはどういうつもりだと叫びたくなる。だがここは城の中であり、叫んだりすることはあまり行儀のいいこととは言えない

メイナは恐怖から逃れるように一度深呼吸をすると、リンクに声だけをかけた


「リンク・・・・・・・」

「ここまで来たらいくら俺だってわかるから、メイナ、話をしよう」


それは、つまり、私のこの毎度起きる怪我のことだろうか

もう既に勘付いていたのか、いやそれが当たり前なのだろうと自分で考えて答えを出す。リンクの腕が私のお腹を締め付けていて、苦しかったけれど、今は話をしようという提案を出したリンクに驚くばかりだった

てっきりリンクはもう私のもとへ来ないと思っていた。彼は彼で、そう、言い方は悪いかもしれないけれど、友人も仲間も王女も周りにいて、私など既にどうでもいい存在だと認識されているのだとばかり思っていたから、今回リンクから突然のフェイントをかけられるとは思いもしていなかったのだ

しかも話ときた。

言ってはなんだが私は話すことなど何もないし、強いていうのならばリンクのせいで私がこうなっているとわかっているのだったら、もう近づかないでほしいというのが本音だった。でもリンクはリンクで話を持ちかけるぐらいだから何か言いたいことがあるのだろうと思い、私はせめて、リンクの話だけでも聞こうと思って、そこで初めて、リンクのほうへと体を半回転させた


「・・・・・・何?」

「ごめんメイナ。今まで・・・・・怪我させてしまって」

「・・・・・・・・・・」

「でもこれだけは言いたいんだ」


さっさと終わらせてくれ。そんな思いがあったのだが、しかしそれは一瞬にして頭の隅に追いやられてしまった


「俺はメイナが好きなんだ。苦しいくらいに愛してる。それは小さい頃からずっとそうだった」

「っ、は?」

「出来れば離れたほうがいいことも知ってたんだ。大分前から。でもそれは出来なかった」


初めて聞いたリンクの思いに対して、メイナは頭の中を真っ白にさせるほかなかった。リンクだって、私だって、所詮は友達という関係なのだと思っていた。リンクは少なくとも私のことをそう思っているのだと信じていたのに

私だって鈍感ではないのだから、リンクの行動で少し、ほんの少しではあったけれど、リンクの気持ちには確かな疑問を抱いていたけれど。それがまさか本当にリンクからこの言葉が出てくるとは想像もしていなかった

恐れていた事態が加速していく。メイナは嫌な予感が頭を過ぎって首を左右に振った。リンクの思いにはどうしても、応えられそうになかったからだった




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