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「あなたからは何か・・・・少しだけ、邪悪な気配を感じます」

「え?」

「どうしてでしょうか。魔物、というわけではないというのに」


リンクを通じて割りと話をする王女の言葉に、私は間抜けな声を出した

ゼルダ王女は魔物や人の気配には敏感だ。それを知っていたからこそ私は王女の言葉を疑うようなことはしなかったし、嘘だとも思わなかった。ただ、理解は出来ないでいた


「邪悪、ですか」

「ほんの少し、なのですが。貴方にも周りにも影響はないみたいですし、もしかしたらただの勘違いなのかもしれません」


そうだといいのですがというゼルダ王女の副声音が若干聞こえた気がした私は、眉間にしわを寄せて目を閉じてみるが、いまいちそういった気配は感じない。凡人の私がしたところでそれは当たり前の結果ではあったが、自分から邪悪なる気配はするといわれたら気にしてしまうのは仕方がないことだった

もしかして私が怪我してるのは、それのせいなんじゃないか?

咄嗟に思いついた考えだったが、安易にそれは違うだろうと言えない。こんなに酷い目にあっているのだ。その、邪悪な気配とやらのせいで私は呪われてるか何かしてるのかもしれない

そうだったらリンクが原因ではないという証拠がハッキリとわかるし、王女の言葉に私は意外な人生の悩みの解決策を見つけ出せそうだった


「それって魔物のものと似てますか?」

「そうですね・・・・似てます。けれどなんというかこう・・・・すごくねっとりとした気配というか」

「ねっとりですか・・・・」


嫌な気配だな。なんだねっとりって。粘着質な感じなのか?

なんともいえない感じのものなのか、王女は困ったように言葉を探している。それにストップをかけてどうにかする方法はないのかと問えば、王女は少し悩んだ末、一人の人物を紹介した

どうやら能力者らしい


「カカリコ村にいるヤクシャという男がいるのですが、基本的にはなんでも出来る不思議な人物です。透視も予言も可能で、霊媒師でも村所属兵士でもあります。彼に出来ないことはないとまで言わしめている男ですから、あなたの中にある邪悪な気配のことも尋ねてみてはいかがでしょう?」

「そんな人がいるんですか・・・・・じゃあ尋ねてみます。ありがとうございます王女」

「いいえ。いずれその気配が何かを引き起こすかもしれませんし、情報の一つでも知っておいたほうがよいでしょう」


王女はインパさんに連れられて、笑顔で別れを告げた。

でもそうか、ヤクシャ、さんか・・・・・

今の怪我じゃあどこにも行くことは出来ないが、この怪我が治ったら一度カカリコ村へ出向いてみるのもいいかもしれない。気分転換にもなるだろう。これどれくらいで治るんだろうか?一ヶ月ちょいくらい?

ベッドのすぐ傍にある棚の上においてあったメモ用紙とペンを手に、白い紙へ「ヤクシャ」という名前を記した。忘れないようにメモしておかなければ。王女がいうくらいなのだからそれなりに、というか相当すごい人なんだろう

私はリンクにもこのことを伝えることにして、今は怪我を治すことに専念することにした。


今日はベッドに寝ていても、中庭へ出ても、何をしていても怪我をすることなどなかった




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