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リンクがいない間、私は元気に過ごした。
怪我をすることもなく、転ぶこともなく、本当に、平和な時間だったのだ。今日は遠征からリンクが帰ってくるとのことだったので何も起こらないように、リンクに会わないように中庭から退場しようとすれば、タイミング悪くリンクの声が聞こえた。
「あ」
「メイナさん!」
一歩リンクから後ずさったのがいけなかったのだ
地面に埋まっているだろう石に踵からつまづいた私は、重力に逆らうこともなく後ろ向きに倒れた。そこには丁度ベンチがあって、痛みを想像するよりも早く頭をぶつける音が聞こえる
「っだ・・・・・!!」
ごつりと。それも強く打った頭に、メイナの意識はぐらぐらと揺れる
ずきりずきりと強打した頭が痛んだ。脳みそをシャッフルされたような気持ち悪さと、息を吸うことすら困難な状態に使用人とリンクは焦った。使用人の掴んでいた手をするりと抜けてメイナが倒れこんだものだから、二人は予想もしていなかったメイナのアクシデントに怯む
リンクはやっぱり少しだけわかっていた
けれども全部起こることは不意打ちであるし、リンクも使用人と一緒な反応を示すことしか出来なかったのである
「クソッ、やっぱり俺が・・・・・!!」
「急いで救護室へ!私は看護師を呼んできます!」
使用人は走った。リンクはメイナを出来るだけ優しく抱いて、頭や傷に響かないように救護室へと急ぐ。ぐったりとしているメイナに悔しげに歯を食いしばると、リンクは頭が痛くなるのを感じた
これだけリンクと一緒にいて、これだけ拒絶するようにいろんな出来事が起こるのであれば、これはもう自分のせいだと認めるしかないのが現実だ
だったらその原因や理由は、何が駄目で何がメイナに悪影響を与えているのかいまいち知っていることは何もなかったが、リンクはメイナに拒絶されているのだと思うと無性に腹が立ってしょうがなかった
なんで近づくことも駄目なのか。声をかけることも許されないではないか
「またメイナさん?とりあえず彼女を優しくベッドに寝かせてあげて」
「はい」
メイナはぼんやりとした顔で視線をうろうろとさ迷わせていた
あぁそうか、ここ救護室か。何回目なんだろう
「と―――、・・・・――ない―」
「―――か?」
意識が薄れる。もう勘弁してくれと、そんな思いを最後に私は目を閉じた
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