11
ファイとリンクは旅を終わらせた。エイルは死んだ。とても悲しそうな顔で、目を閉じて、息をひきとった
今まで想いや欲を我慢したばっかりに、最期は酷いものだったのだ
それでも彼は幸せだったのだから、よかったんだろうと思う。最後にゼルダと再会し、エイルのことを話せば、ゼルダまでもが泣いて声を押し殺していた。せっかく夜の空を飛び、主人を助けようとしたエイルのロフトバードは、二日前空に飛んでいったっきり帰って来ない
そして、ファイとさようならをする今日、いるべきだったエイルはいなかった。エイルの亡骸だけがリンクの腕の中へとおさまっている
「人の言葉を借りるのならば、ファイはきっと「許せなかった」のでしょう。今ならわかります。涙を流すのは悲しい証拠です」
「そうだろうね・・・」
台座の前で最後の別れをすませようとリンクとファイは話をした。ファイは今更になってエイルの存在に、気がついた。
気がついてしまったのだ。最後に、こうして。
「けれど、」
リンクの腕の中の壺が、ファイの力によって持ち上げられる
そのままリンクから離れてファイのもとへと壺が移動すると、ファイは大事そうにそれを抱きしめた。骨になってしまっているエイルを抱きしめて、リンクを見る。リンクは何もいわなかった
「ファイはとても、幸せでした」
愛されて幸せだった。どこかわからないふりをしていながらも、エイルの気持ちを受け取ってしまっていることがあった。ファイは、エイルに愛されて強く良かったと思えたのだ
リンクが小さく笑うと、ファイはツボを抱きしめたまま、エイルと一緒に剣となって台座におさまった。
「うん、お幸せにね」
“ありがとうございました、リンク、エイル”
台座の近くで男が微笑んだ
リンクにはそれが見えていた。だから微笑み返して、寂しいけれど、ファイとエイルと別れるのは本当に寂しかったけれど、台座から離れるように歩き出した
それを見送るように、半透明の男は女神の剣を抱きしめてリンクの背中を見つめていた
(また目覚めるときまで、さようなら)
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