ポケモンに好かれることはとても気分がいい。自分にだけ懐いたりするともっと可愛げがあると思うし、部屋の中を歩き回ったりするときに後ろをついてくる様は見ていて頬が緩む。
そう、とてもかわいいのだ。私はポケモンが大好きで大好きで、苦手なポケモンなんてほとんどいないのだけれど、さすがに限度というものがあった。
いや本当に。こうも四六時中べったりされると困るというか・・・・だって体大きいし・・・
「ちょっと。私の膝はイーブイ専用なの!あんたが使っていい場所じゃないの」
「・・・・・・・・・」
「無視かよッ!」
聞いて驚くなよ。今私の膝に頭をのせている人物、もといポケモンの名前はカイオーガである。・・・・・嘘じゃないよ?部屋にいるときは原型だと家壊れちゃうから、人型をとれるということだったのでそうしてもらってるだけ。
本来なら彼はユウキ君の手持ちとして活動しているはずだったのだが、どうしてかカイオーガは私に目をつけたらしく、ことあるごとに家に来てはこうしてべったりと引っ付いていた。
困ったな・・・・・
「ねぇ、イーブイが寂しそうだから離れて」
「うるさい。丸呑みするぞ」
「洒落にならないかな!いいから、もう、あんたは私の手持ちじゃないんだから、いい加減家に帰ってよ!」
部屋の隅でガタガタ震え始めたイーブイ。カイオーガの丸呑みなんて冗談に聞こえなかったよね・・・・原型の口大きいしね・・・・
親であるブラッキーが寄り添ってイーブイを落ち着かせているのが見えて、ひとまずカイオーガの頭を退かせることにした。人の頭の重さを考えたことがあるのかこいつ。
「キスしたら退いてやろう」
「ありきたりなからかい方だね・・・・」
「ほら、」
「ちょちょっ、ちょい!?なにっ!」
いたっ!痛いわボケ!頭を無理矢理下に押さえつけられて、やむを得ず彼の額にキスを落とす。ここで抵抗が少ないのは彼がポケモンだと理解しているからだろうし、男の形をしてはいても、別段変な気持ちになることはなかった。
はい、もうしたから退いて。
そう言おうとして頭を上げようか、と思っていたところ、どうしてか彼の手によって頭があげられない。私の後頭部をがっしりと掴んだまま、至近距離で彼の瞳を見つめると、彼はうっすらと笑みを浮かべた。
それに、得体のしれない恐怖がゾワッと背筋を凍らせる。
「な、なに・・・・」
「いつかは口にもらうぞ」
「す、るわけないでしょ」
「いいや。誓い合うその時には、必ず貰う」
お前の肉体も魂も、すべて。
「誓い合うのにななしの意志は要らん」
お前の気持ちなどあってないようなものだからな。私から逃げられぬということを、早めに理解しておくことだ。