2. 俺は、

 愛ってなんだろう。
 そばにいることでそれは満たされるんじゃないかと思う。「愛してる」と言葉にすることだって重要だ。
 それより何より、愛は、全てを受容することなんじゃないかと、思うわけで。
「なぁ、あんたさ、何してんの」
 あと、愛する人を誑かす奴は、死ねばいいと本気で思ってる。だって、愛しくて愛しくて愛しくてたまらない恋人にちょっかいをかけられてるんだぞ。怒らない方がおかしい。
「や、やめて、りゅ、リューン」
 彼女はカタカタと震えながら壁際でうずくまっている。
「ああ、ごめん。こんなもん見せて…でも、すぐ終わるから。そうしたら、一緒に帰ろうな」
 なるべく安心させることができるように、優しく微笑む。しかし、彼女はビクリと身体を震わせてしまった。おかしいな。
「あんた、彼女に何したんだよ」
 じろ、と足元に転がる男に目をやった。声をかけても返事がない。
「おい、寝てんじゃねーよ」
 ガッと足でそいつを仰向けにすると、血まみれの顔を歪ませて意識を失っていた。腕の骨が折れたぐらいで気絶なんて情けねーな。
「なぁ、おい、起きろよ」
 ガツガツと蹴ってみるが、起きない。
「リューン、し、死んじゃう、」
「だって、君に手を出したじゃねぇか。ゆるせねぇ」
「ち、ちが、その人だけのせいじゃ、な…」
「知ってるよ」
「え…」
「この男に騙されたんだよな?だって俺のこと愛してるんだもんな?この前そう言ってくれたじゃないか。だから、悪いのは全部こいつ。俺の『愛』を踏みにじった。だから、罰を受けるべきだろ。ああでも、街はこんな危ない奴らで溢れてるから…君も、今度から家から出ない方がいいかもね…そうだ、それがいい。そうしたら安心だ」
 にっこりと微笑むと、彼女は絶句した。
「ねぇ、」
「ひっ」
 俺が彼女に手を差し伸べると、彼女はぱしりとはたいた。
「…」
「あ…あ、ごめ、わた、私、」
「…俺のこと愛してくれてるって言ったよな」
「ち、ちが、す、少し、寂しかっただけで、私、私、本当はその人と結婚するつもりで、あれは一度っきりのことで、」
「…」
 その瞬間、サァッと熱が引いていくのが分かった。なぁーんだ。今回もそれか。俺のこと、本気じゃないんだ。
「じゃあ愛してるなんて簡単に言うなよ」
 盛大なため息を吐きながら、彼女に冷たい目線を向けた。
 それで、もう用は無かったんだけど、慌てて入ってきた人物に見つかってしまった。残念。




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