オリジナル | ナノ
推しを観察する上での特等席はどこだろうか。
大きな、画質最高のテレビの前?
舞台の最前列で目が合った時?
出待ちしてようやくめぐり逢った瞬間?
誰よりも、今、この瞬間の自分こそが最高に幸せだ。そう、彼は胸を張って言えるだろう。
生まれてきて良かった。死んで良かった。そして、生まれ変わって良かった。
誰に感謝すればいいのかわからなかったので、とりあえず神というものに感謝した。
そして、推しが今日も輝いていることを推しに感謝する。
「よく現れたな、フレイム」
「お前はエタニティの……」
「ブラックナイト」
仮面舞踏会にでもつけていくような、顔の上半分を覆い隠す仮面。それに触れながら、ああ、口元がにやけそうになるのを必死でこらえる。
仮面をしていて本当に良かった。そうでなければあまりに推しとの距離が近すぎて耐えられなかっただろう。だが口元が隠れていないのはいささか不安だ。普段からあまり表情が変わらない方とは言われるが、さすがに。不敵に笑う、程度に見えていればいいのだが。
さあ、仕事の時間だ。
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