短編 | ナノ 空から降ってきたもの


「天秤座のあなた。今日は空から天使が降るでしょう」

何のCM、と思ったら朝の占いだった。
天使とは何だろうか。可愛い女の子のことだろうか。それが俺に降ってくる? まさか。ないない。そんな馬鹿なことあるわけないでしょ。
そんなことを考えてからトーストをかじる。いつもはシンプルにマーガリンしか塗らない焼いた食パンの上に、今日はなんと苺ジャムがのっている。マーガリンの風味と苺ジャムの甘酸っぱさが口いっぱいに広がっていった。
少し目が覚めた。そんな頭でもう1度考えると、さきほどの占いは「あなたは今日、恋をします」という予言だったのかもしれないと思う。何ともロマンチックな予言だ。当たるとは到底思えないけれど。

さっさとトーストを食べ終えると、喉を潤すのに利用したコップを洗う。シャツにパン屑がついていたのを軽く払ってからブレザーを着る。ネクタイなんて洒落ているのか野暮ったいのかわからない面倒なだけのものは、最後にしかたなく締めた。
テレビを消したことを確認し、玄関で靴を履く。と、ここまでは順調にいつも通り。
いや、本当は珍しく塗った苺ジャムの蓋がなかなか開かず数分間奮闘していたから、少し時間がない。遅刻寸前とまではいかないが、気を抜くとそれも有り得そうな感じ。
だから、少し急いでドアを開けた。鍵をかけて、さあいくぞ。一歩踏み出して、


『何か』が降ってくるのを目撃した。







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