彼はそれを愛と言った | ナノ
3
放課後。教室には待ってもいない塚越がやってきた。
「中江さん、一緒に帰りませんか!」
「……約束あるから」
約束、というのはもちろん高里と帰ることだ。しかし塚越はどういうわけか違うことを想像したらしい。
「喧嘩っすか!?俺も連れてってください!!」
……やはり彼には喜代史が不良にしか見えていないらしい。
「そうじゃなくて――」
一緒に帰るヤツがいるのだと告げようと口を開いた瞬間、ガラッと引き戸が開いた。
……高里だ。
「キヨ、どうしたの? 真っ青だけど……」
「…………」
心配そうに自分を見上げる高里に指摘され、変な汗をかいていることに気付く。
どうしてだったっけ?
どうして、怖いんだろう。
怖い……?
「帰ろうか」
「……ああ」
高里は怒っていなかった。
(どうして怒っていると思ったのだろう。待たされたのは自分なのに)
けれど、高里の反応にどこか落胆している自分もいた。
(どうして怒らないのだろう。だって、だって……)
……どうしてだったっけ?
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