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奇跡という名のそれ(宮VSヨン→竹) [ 179/196 ]
奇跡が起きたのだと、言わざるをえない。
そう、宮津は思った。
自分は死んだ。それはどうやら変えようのない事実らしい。
何故ならここはおよそ現世とは思えないような場所だったからだ。
よく聞くのは、花畑だとか三途の川だとか…
だが、やはり宮津たちには、そんなところより海の方が性に合うらしい。
一緒に死んだはずの『いそかぜ』
そしてその『いそかぜ』が海に浮かび、宮津はその中にいた。
「艦長」
喜びを隠しきれない声で、自分を呼ぶ者がいる。
宮津は、懐かしさのあまりじんときて、歪んだ目線を背後に向けた。
「副長」
呼べば、微笑む。
振り返った先には竹中がいた。
「お疲れ様でした」
「君こそ」
「いえ、おれは…」
待っていてくれた。
自分が戻るのを…
この船と共に戻ってくるのを。
ひどく穏やかな気持ちになって、肩の荷が全ておりたような気さえする。
「ただいま」
「おかえりなさい」
何だかくすぐったい気持ちになって、同時に笑い出した。
「おや、楽しそうですね」
と、背後から聞こえてきた、声。
同時に顔をしかめた。
「…ヨンファ」
「少佐が何故ここに…」
たしかにヨンファは死んだ。が、ここに現われる理由が思い当たらない。
いや、我々に対する恨みか?
「恨みなんかではないのでご心配なく。ただ、わたしも死後くらいは平和に暮らしたいと思いましてね」
そう言いながら、舐めつけるように竹中を見る眼が、何を語っているのかわかってしまい、宮津はヨンファに笑いかけた。
「ああ、よろしく頼むよ少佐」
かくして戦いの火蓋は落とされたのだ。
――勿論竹中は一人蚊帳の外であったが
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